ドイツ自動車部品大手、転換期にビジネスチャンスを見いだす

(ドイツ)

ミュンヘン発

2022年03月22日

ドイツの自動車産業も、ESG(環境・社会・ガバナンス)などへの対応が求められている転換期を踏まえ、ビジネスチャンスを見いだそうと大手自動車部品メーカーなどが活発な動きをみせている。最近の各社の取り組みを以下に紹介する。

ドイツの自動車部品大手コンチネンタルは3月9日、2021年の決算を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。同社の2021年の連結売上高は前年比6.0%増の338億ユーロだった。同社はリサイクル素材を使用したタイヤの製品開発に取り組んでいる。例えば、革新的な製造コンセプト「Conti GreenConcept」に基づいたタイヤ製品は、原料の半分以上にタンポポ由来の天然ゴム、籾(もみ)殻の灰から生成されるケイ酸塩、植物油や樹脂などのリサイクル素材が使用され、さらにタイヤの骨格を形成するカーカスには、リサイクルペットボトルから作られたポリエステルを使用している。遅くとも2050年までに、タイヤの原料をリサイクル素材に置き換えることが同社の目標だ。

さらに、コンチネンタルは、電気自動車(EV)の領域でも存在感を示している。同社によると2021年、世界で最もEV販売台数の多い自動車メーカー10社のうち7社がコンチネンタルの高度な技術を評価し、テスラ、ポルシェ、メルセデス・ベンツ、起亜(KIA)、比亜迪汽車(BYD)、フォードなどが同社のタイヤを採用した。さらに、2022年3月15日にはEV用のオールシーズンタイヤ「AllSeasonContact」の発売を発表。転がり抵抗が小さいため、エネルギー消費を抑えられ、EVの航続距離を延ばすことができる。

同じくドイツの自動車部品大手シェフラーも3月8日、2021年の決算外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます持続可能な取り組みをまとめたレポートを発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。2021年のグループ全体の売上高は前年比9.7%増の約139億ユーロだった。同社は2021年から欧州の生産拠点において全ての電力を再生可能エネルギーから調達している。2030年までに、自社の生産工程(スコープ1および2)、2040年までに、原材料や配送など、自社に供給する過程〔スコープ3の上流(注1)〕でのカーボンニュートラルを目指す。

シェフラーは2021年11月、スウェーデンのスタートアップ企業H2グリーンスチールから、グリーン鉄鋼を2025年以降に年間10万トン調達すると発表(2021年11月19日記事参照)。この連携により、同社は二酸化炭素(CO2)排出量を年間最大20万トン削減できるという。さらに、2022年1月には、液体有機水素キャリア(LOHC、注2)燃料電池の開発のため、ドイツのハイドロジーニアスLOHCテクノロジーズ(Hydrogenious LOHC Technologies)などとの水素技術の協力合意の覚書も締結した(2022年2月9日記事参照)。

(注1)スコープとは、温室効果ガス(GHG)排出量の算定、報告の基準の1つ。スコープ1は、事業者自らによるGHGの直接排出(例えば、ボイラーや焼却炉、自動車燃料の燃焼)を対象にする。スコープ2は、他社から供給された電気、蒸気、熱供給、冷却などの2次エネルギーの使用による間接排出。さらに、スコープ3は、スコープ1とスコープ2以外の間接排出(事業活動に関連する他社の排出)にまで踏み込む。「スコープ3上流」とは、スコープ3のうち、原材料調達やその輸送に関する部分のこと。

(注2)液体有機水素キャリア(Liquid organic hydrogen carriers)の略。化学反応によって、水素を吸収・放出できる有機化合物。

(大河原楓)

(ドイツ)

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