シンガポールを除くASEAN主要国でロシアに直接的な言及せず

(ASEAN、ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)

アジア大洋州課

2022年03月09日

ジェトロが3月7日までの政府発表や現地報道から、ロシアによるウクライナ侵攻に対するASEAN各国の反応をまとめたところ、ほとんどの国でロシアに対する直接的な言及を避けつつ、対話による解決を要望していた(添付資料表参照)。3月2日の国連総会の緊急特別会合における、ロシアを非難する決議案(2022年3月4日記事参照)には、ベトナムとラオスを除く全てのASEANの国が賛成をしたが、ロシアに対する経済制裁を実施したのはシンガポールのみとなっている。

ASEAN加盟国の外相はウクライナ情勢について、これまでに2度の共同声明を発表したが、いずれも声明の中でもロシアの国名には言及していない。ロシアによる軍事侵攻の開始に対する1度目の共同声明(2月26日)では、深い懸念と全ての関係者に対して最大限の自制と対話を求めた。その後、現地情勢の悪化を踏まえて出された、3月3日に発表した2回目の共同声明PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)では、人道的側面にも憂慮を示し、即時の停戦と政治的な対話を要請した。

ASEAN外相による共同声明と同様に、ほとんどの国では政府発表において、ロシアを名指して批判していない。3月5日付のバンコク・ポストによると、政府筋の話として、タイのプラユット・チャンオーチャー首相は3月2日、各国の駐タイ大使とのミーティングにおいて、ロシアとの関係に配慮し、慎重に対応する旨を発言した。また、マレーシア外務省は3月5日、国連総会の緊急特別会合での決議を受けて声明を発表し、全ての関係者に対して、自制と対話による平和的な解決を求めることを強調した。インドネシア外務省も、ロシアの名指しを避けつつも、2月28日の声明で「ウクライナでの軍事侵攻を容認できない」とするにとどまった。

ASEANの中では、唯一、シンガポールが経済制裁の実施を発表した。同国外務省は3月5日、武器や電子製品など軍事転用可能な民生品のロシアへの輸出禁止やロシア系銀行4行との取引停止など経済制裁の具体的な内容を発表した(2022年3月8日記事参照)。なお、ミャンマーは暫定的に民主派が国連に残っていることから、国連決議では「賛成」を表明したが、同国を実効支配する国軍のスポークスパーソンは2月26日、ロシアを支持する発言を行っている。

(山城武伸)

(ASEAN、ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)

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