中国での模倣品対策の変化についてウェビナーを開催
(中国)
イノベーション・知的財産部知的財産課
2022年03月25日
海外における模倣品・海賊版対策に取組む権利者で構成される国際知的財産保護フォーラム(IIPPF)(注1)は3月4日、中国における模倣品対策の変遷やIIPPFの活動を振り返るウェビナーを実施した。本ウェビナーは、IIPPF年次総会に併催して開催したもので、IIPPFメンバーをはじめ、300人を超える企業・団体が参加した。
IIPPFは、2022年4月に設立20周年という節目を迎える。4つの地域・分野別プロジェクトチーム(PJ)を活動母体として、諸外国政府に対して制度改善要望の提言や真贋(しんがん)判定セミナーなどを実施しており、うち、中国PJでは、設立当初から訪中ミッションの派遣を通じて中国政府に対し、同国での法制度や執行状況の改善に向け建議活動を行ってきた。
ウェビナーではIIPPF設立20周年を記念し、これまでの主な取り組み先である中国をテーマとしたセミナー・パネルディスカッションを開催した。
前半は、ジェトロ北京事務所の山本英一知的財産部長が、中国の知財戦略の沿革や、産業財産権の出願・登録動向、行政取り締まりおよび知財関連訴訟の動向などに関する説明のほか、中国における近年の知財関連法の改正状況や今後の影響について解説した。
後半は、これまで中国PJの活動に参加してきた企業、専門家をパネリストに迎え、「中国におけるIIPPFの取り組みと今後の展望」と題したパネルディスカッションを行った。中国における模倣品被害の移り変わりや今後の見通し、IIPPF事業の方向性などについて活発な意見交換が行われた。主な内容は以下のとおり。
- 2002年のIIPPF設立当初は中国政府による行政摘発(注2)も少なく、模倣品が多く出回っていた。
- 転換を迎えたのは2014年ごろ。キャッシュレス決済、電気自動車、ドローンやAI(人工知能)の普及など、中国企業のテクノロジー分野での目覚ましい発展が実現し、それら知財保護への意識の高まりとともに、徐々に摘発や建議に応じてもらえるようになってきた。
- 一方で、EC(電子商取引)サイトの台頭による個人購入を主流とした、取引形態の変化(小口化)に伴い、模倣品被害相談が再び増加。また、商標分野では巧妙化する手口への対応として、行政摘発に代わり、訴訟が多く使われようになった。
- ECサイト上での模倣品の増加に行政・司法対応が追い付かず、EC事業者をより巻き込むような仕組みが必要、との認識になりつつある。
ウェビナーの参加者からは、「現場対応を長年されてきたメンバーによるディスカッションはとても興味深く、また今後の中国の模倣品に関するトレンドについての見解は非常に参考になった」「実態を実体験からも裏付けていただき有用だった」という声があった。
IIPPFでは近年、オンライン上での模倣品の摘発を目的とし、アリババやアマゾンなど海外EC事業者と意見交換会を開催している(2021年3月11日記事参照)。
(注1)IIPPFは、2002年4月に、模倣品・海賊版などの海外における知的財産権侵害問題の解決に意欲を有する企業・団体によって設立され、現在、90団体・200企業が登録している。IIPPFの概要・メンバー登録申し込みはこちらから。
(注2)中国における模倣品関連の救済ルートは大きく分けて、(1)司法救済、(2)行政救済、(3)刑事救済の3種類。(2)は行政摘発と呼ばれ、地方政府に設置された管轄行政機関が、侵害行為に対する取り締まりを実施する。司法救済に比べて費用や時間がかからないため、多くの権利企業が利用している。
(藤本海香子)
(中国)
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