米連邦通信委、パシフィック・ネットワークスとコムネットの事業免許を取り消し、中国政府の影響を懸念

(米国、中国)

ニューヨーク発

2022年03月18日

米国連邦通信委員会(FCC)は3月16日、中国の国有企業の子会社であるパシフィック・ネットワークスとその子会社コムネットに対する米国での通信関連事業の免許を取り消す行政命令を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。両社に対し、命令の発表から60日以内に、米国で提供する国内および国際通信サービスを終了するよう命じた。

FCCは2021年3月、両社が米国での通信事業に関わる安全保障上の懸念を払拭(ふっしょく)できなかったとして、両社の事業免許を取り消すべきかを決める手続きを開始していた。FCCは命令で、中国政府の搾取・影響・管理を受け、(米国の)独立した司法監督下にある十分な法的手続きを経ずに、中国政府の要求に従うよう強制される可能性が高い、と説明。中国政府による両社の所有と支配は、中国側に米国の通信へのアクセスなどの機会を与え、スパイ活動やそのほかの有害な行為を許すリスクを著しく高めると判断した。また、両社が国際通信サービスに関わる免許取得に際し国土安全保障省および司法省に順守を約束した事項に違反したことも、免許取り消しの理由として挙げている(注1)。

FCCは、これまでも国家安全保障上の懸念を理由に、2021年10月には中国電信(チャイナテレコム)アメリカスに対し、2022年1月には中国聯合網絡通信(チャイナユニコム)アメリカスに対し、事業免許の取り消しを命じている(2021年10月28日記事2022年1月31日記事参照)。

FCCのブレンダン・カー委員は声明で、今回の決定の重要性を強調した一方、中国がもたらす脅威に対処する上で連邦政府が今後取るべき施策を提案している。同委員は、国家安全保障と米国人の安全に容認できないリスクをもたらし得るとして、FCCが指定した「対象機器・サービス外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」のリスト(注2)を更新すべきとした。追加指定の候補として、FCCによって通信事業免許を取り消された企業や中国のドローン製造大手DJIを挙げた。また、2021年に成立した安全機器法に基づく規則策定を急ぐべき、と指摘した。FCCは2021年10月、「対象機器・サービス」について、米国への輸入と国内販売のための認証を与えないよう既存のルールを改正する規則案を官報で公示し、パブリックコメントを募集していたが、最終規則の決定にはまだ至っていない(2021年8月23日記事2021年11月15日記事参照)。

「対象機器・サービス」のリストについて、FCCのジェシカ・ローゼンワーセル委員長は声明で、現在更新作業を行っており、更新されたリストを3月中に公表すると明らかにしている。

(注1)FCCは、パシフィック・ネットワークスとコムネットが、通信内容への不正アクセスを防止する措置を講じることや、米政府の許可なく通信記録を他者に開示しないことなどを条件に、両社に対し国際通信サービスの免許を付与している。

(注2)記事掲載時点では、中国の華為技術(ファーウェイ)、中興通訊(ZTE)、ハイテラ、ハイクビジョン、ダーファの5社による機器・サービスのみが掲載されている。

(甲斐野裕之)

(米国、中国)

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