米USTR、2022~2026年度の組織目標公表、貿易救済措置を積極活用

(米国)

ニューヨーク発

2022年03月03日

米国通商代表部(USTR)は3月1日、2022~2026会計年度の組織目標やその目的をまとめた報告書(戦略計画)を公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。戦略計画は「2010年政府業績成果法(GPRA)現代化法」に基づいて4年ごとに更新されるが、公表するのは2013~2017会計年度以来となる。

USTRは組織の使命として、バイデン政権が掲げる「労働者中心の通商政策」を明記した。労働組合や労働者支援団体などに関与し、労働者の視点と価値観が通商政策の策定・実施に反映されるようにすることが必要とした。USTRは戦略計画と同じ日に公表した「2022年の通商政策課題」でも、労働者中心の通商政策を前面に打ち出している(2022年3月2日記事参照)。

組織目標としては、次の6つを掲げた。

(1)国外市場を開放し、不公正貿易に対抗する。

(2)米通商法を完全に執行し、他国による協定順守を監視し、他国の責任を追及するために利用可能な全ての手段を用いる。

(3)大統領の通商課題に対応するために革新的な政策を策定し、実施する。

(4)包摂的な手続きを通じて公平な通商政策を策定する。

(5)大統領の通商課題を効果的に伝える。

(6)模範的な機関として、組織的な卓越性を実現する。

(1)では、米国で製造した製品や農産品、サービスの国外市場を拡大する協定を交渉・実施することに加え、同盟・同志国とデジタル経済分野で高い基準のルールを確立することなどを目的に据えた。(2)では、不公正な貿易慣行との戦いには1974年通商法301条や他の貿易救済措置の活用が不可欠とした。また、中国のWTOルールの順守状況(2022年2月17日記事参照)や人権問題への対処にも言及した。

(3)では、世界の貿易システムで温室効果ガス排出削減に向け、市場原理に基づく取り組みを模索するとした。必要に応じて、国内政策と整合するかたちで炭素国境調整措置も検討する。(4)は2013~2017会計年度の戦略計画には含まれておらず、今回新しく追加した目標となる。USTRは、ジョー・バイデン大統領が2021年1月20日の就任初日に署名した人種的公平性に関する大統領令外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますなどに沿い、政策形成過程で幅広い利害関係者の関与を目指すと強調した。USTRのキャサリン・タイ代表は2021年10月、より公平な通商政策を実行するため、米国際貿易委員会(ITC)に対し、貿易や通商政策が労働者に与える影響を人種や性別、収入などの階層別に調査するよう求め、ITCは同年11月に調査開始に応じている。

(5)では、バイデン政権の通商政策方針が経済成長に寄与するとの理解を国内外で醸成することなどを目指す。(6)では、多様で包摂的な人事方針を定めた。

(甲斐野裕之)

(米国)

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