米連邦通信委、国家安全保障の脅威の機器・サービスにカスペルスキーや中国電信など3社を追加

(米国、中国、ロシア)

ニューヨーク発

2022年03月29日

米国連邦通信委員会(FCC)は3月25日、国家安全保障と米国人の安全に容認できない脅威をもたらし得る「対象機器・サービス」のリストを更新したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。ロシアのウイルス対策ソフト大手カスペルスキー、中国電信(チャイナテレコム)アメリカス、中国移動(チャイナモバイル)インターナショナルUSAの3社の機器・サービスがリストに追加された(注1)。これにより、同リスト掲載企業は中国企業7社、ロシア企業1社の計8社となった。

「対象機器・サービス」のリスト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは、「2019年安全で信頼できる通信ネットワーク法(HR.4998)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」に基づき、FCCが2021年3月に初めて公表した。これまでは中国の華為技術(ファーウェイ)、中興通訊(ZTE)、ハイテラ、ハイクビジョン、ダーファの5社による機器・サービスのみが掲載されていた。FCCのジェシカ・ローゼンワーセル委員長は、更新されたリストを2022年3月中に公表すると明らかにしていた(2022年3月18日記事参照)。

FCCは、今回の追加指定はいずれも他の連邦政府機関による関連の決定に基づくとしている(注2)。カスペルスキーに関しては、国土安全保障省が2017年9月に連邦政府機関に対し、情報システムから同社製品を排除するよう命じたことを挙げた。中国電信アメリカスに関しては、司法省などから成る省庁横断の委員会(注3)が、同社による米国での通信サービスが国家安全保障と法執行に重大で許容できないリスクをもたらすと判断したことを理由とした(注4)。中国移動インターナショナルUSAに関しても、同委員会が同社の米国市場参入は同様のリスクをもたらすと勧告したことを挙げた(注5)。

「対象機器・サービス」に指定された場合、FCCの補助金を使ってそれら機器・サービスを購入、リース、維持することなどが禁じられる。さらに、FCCは現在、「対象機器・サービス」に指定された機器に対して、認証にかかる一切の審査または承認を行わないことを明確にするための規則の策定を進めており、同規則は2022年11月までに導入されることになっている(2021年11月15日記事参照)。

今回のリスト更新について、FCCのローゼンワーセル委員長はプレスリリースで、国家安全保障上の脅威に対して、米国の通信ネットワークを強化する政府一体の取り組みの一環だとし、「この分野でのわれわれの取り組みは続く」と指摘した。

(注1)掲載企業の子会社や関連会社もリストに含まれるとみなされる。

(注2)「2019年安全で信頼できる通信ネットワーク法」はFCCに対し、国土安全保障省など国家安全保障に関わる省庁による関連の決定などに基づいて、機器・サービスをリストに掲載するよう指示している。

(注3)2020年4月の大統領令13913号外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますにより設立された委員会。同委員会は、外国に所有または支配されている企業による、米国の通信事業に関わる国家安全保障や法執行上の懸念などについて、FCCに助言を行う。

(注4)FCCは、省庁横断の委員会の勧告などを踏まえ、2021年10月に中国電信アメリカスに対して、米国での通信関連事業の免許を取り消す行政命令を発表した(2021年10月28日記事参照)。

(注5)FCCは、省庁横断の委員会の勧告などを踏まえ、2019年5月に中国移動の米国市場参入を却下した(2019年5月10日記事参照)。

(甲斐野裕之)

(米国、中国、ロシア)

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