EUの対ロシア制裁措置を追加導入、難民受け入れも表明

(スイス、ロシア、ウクライナ、EU)

ジュネーブ発

2022年03月09日

スイス連邦参事会(内閣)は3月4日、対ロシア制裁に関する政令の全面的な改正を承認したと発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。連邦参事会は既に、EUが2月23日および25日に採択した対ロシア制裁パッケージを適用していたが(2022年3月2日記事参照)、今回の改正により、EUが採択した対ロシア制裁措置がさらに広い範囲でスイスでも適用されることとなる。改正された政令外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは、3月4日午後6時に発効した。

改正によって、ロシアへの二重用途物品の輸出、ロシアの軍事技術強化や防衛・安全保障部門に資する可能性のある物品の輸出、これらに関する技術支援、仲介サービス、出資が禁止された。また、石油精製、航空、宇宙産業に関連する商品や技術のロシアへの輸出も同様に禁止された。さらに、ロシア中央銀行との取引が禁止され、EUと同様に、特定のロシアの銀行を国際銀行間通信協会(SWIFT)などによる海外送金システムから排除することが決定された。

難民受け入れ準備も進む

連邦参事会はウクライナからの難民に対して、スイスでの一時的な滞在を許可する「Sパーミット」を発行することを検討している(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。Sパーミットは、ユーゴスラビア紛争の際に難民を遅滞なく受け入れるためにつくられた滞在許可証で、これにより、紛争などにより保護が必要とされる期間、スイスに滞在することができる。ただし、スイスから出国後、再び入国することはできない。連邦参事会は、3月3日にEUが合意した難民受け入れ計画の内容に準じた受け入れを進めるため、現行のSパーミットの規定を緩和し、難民の就労およびシェンゲン域内の自由な移動を可能にすることを検討している。連邦参事会は、州や支援団体、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)などと協議の上、3月11日にSパーミット発行に関する最終決定を行う。連邦移民局によると、3月7日までに約700人がスイスへの避難を申請している。スイスでは、6地域・県に庇護センターが設置され、約5,000床が用意されているが、そのうちの7割がウクライナ危機以前にうまっている。避難民の数は今後増加すると見込まれており、収容能力の拡大が求められている。連邦移民局と連携している市民団体「Campax」によると、3月5日時点で1万5,227世帯が自宅などへのウクライナ難民受け入れを申し出ている。

(城倉ふみ、マリオ・マルケジニ)

(スイス、ロシア、ウクライナ、EU)

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