ウクライナ情勢、企業に中長期的な原材料調達の懸念

(マレーシア、ロシア、ウクライナ)

クアラルンプール発

2022年03月07日

ウクライナ情勢の深刻化に対し、マレーシア国内の企業活動への即時の直接的な波及効果を懸念する声は今のところ多くない。他方、ジェトロのヒアリングによると、マレーシアの日系企業からは、長い目で見れば、各種ビジネスに間接的な悪影響をもたらすとの指摘もある。

マレーシアの有識者は、資源価格の高騰が短期的にはマレーシアの輸出には追い風になるとの見方(2022年2月24日記事参照)をしていたところ、同国のパーム油原油価格は3月1日に初めて1トン当たり8,000リンギ(約22万4,000円、1リンギ=約28円)を突破した。ロシアとウクライナが主要生産国であるヒマワリ油の供給停止により、一時的な買い占めが起きたことが背景にあるとみられている(「エッジ」3月1日)。マレーシアパーム油委員会(MPOB)は、今後も上昇傾向が続くと分析する。

資源価格の高騰を受けて、他の商品価格の上昇が予想される中、マレーシアの日系企業からは、「プランテーションにはプラスだが、加工業者にとっては原料調達面でコスト増となる」「ロシアやウクライナからの半製品の供給が止まることで、グローバル市況が高騰し不安定化する」「両国から原料を調達している半導体製造が影響を受ければ、マレーシア自動車産業においても部材調達がさらに逼迫する」など、中長期的な原材料調達に対する懸念が出ている。中には、仕入れる原材料の価格が大幅に上昇したと声もあった。

政府は表立ったロシア批判や経済制裁を行わず

マレーシアは、3月2日に採択された国連総会のロシア非難決議に賛成したものの、表立ったロシア批判や経済制裁を科す動きなどは示していない。マレーシア首相府は、2月26日の声明(マレーシア首相府参照外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)で、紛争の激化を懸念するとともに、「国際法と国連憲章に基づく対話と交渉を通じ、紛争を平和的かつ友好的に解決できるよう努力すべきだ。マレーシアはそうした取り組みを支持する」と、対話による解決を表明するにとどまった。3月1日に、ロシア籍の石油タンカーがマレーシアへの寄港を拒否された際にも、これを発表した運輸省は、寄港を阻止したのは港湾業者だとし、政府の立場には言及しなかった。ロシア国営ガス企業ガスプロムとの協業事業を持つマレーシア国営石油会社ペトロナスも、早急に提携解消を行うつもりはないことを表明している。

(吾郷伊都子)

(マレーシア、ロシア、ウクライナ)

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