2021年のEUの農産品・食品貿易、高付加価値食品の輸出好調で黒字維持

(EU、ロシア、ウクライナ)

ブリュッセル発

2022年03月24日

欧州委員会は3月23日、EUの2021年の農産品・食品の貿易報告書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。それによると、EU域外への農産品・食品の輸出額は1,980億ユーロ(前年比7.3%増)、輸入額は1,301億ユーロ(7.0%増)となり、貿易収支は679億ユーロ(8.1%増)の黒字になった。貿易黒字の増加は、ワイン・蒸留酒(スピリッツ)・リキュールや、チョコレート・菓子類といった高付加価値食品の輸出が好調だったことによる。他方、EUの農業従事者の所得に、より直接的な影響が出る豚肉、乳製品、小麦などの輸出は、価格上昇のあおりを受けて前年の勢いを失った。

輸出相手国を金額ベースでみると、英国(構成比:21.2%)、米国(12.4%)、中国(8.7%)の上位3カ国が、全体の4割以上を占めた。このうち、米国については、同国向けの農産品・食品輸出の約33%を占めたワインとスピリッツ、さらにパスタなど穀物を原料とする加工食品の輸出が伸び、輸出額は前年比14.2%増となった。対照的に、2020年に過去最高の輸出額となった中国(2021年4月8日記事参照)は、同年好調だった豚肉や乳児用食品が振るわず、3.1%減だった。日本への農産品・食品輸出額は73億8,400万ユーロ(構成比3.7%、前年比5.7%増)で、域外国では5位だった。

輸入相手国を金額ベースでみると、ブラジル(構成比:10.4%)、英国(9.1%)、米国(7.1%)が上位3カ国となった。このうち、前年首位だった英国は前年比24.5%減と落ち込んだ。英国のEU離脱(ブレグジット)の移行期間終了に伴い、2021年1月から衛生植物検疫措置が導入されたため、同国からEU向けの農産品・食品の輸出は、特に2021年1月に前年同月比67%減と急減するなど低調だった。

ウクライナ情勢の影響による穀物などの供給不安広がる

報告書ではまた、ウクライナ情勢について触れ、EUおよび世界の農産品・食品貿易に重大な影響を与えていると指摘した。ウクライナからEU向けの2021年の農産品・食品の輸出額は約70億ユーロで、同国はEUにとって4位の農産物・食品の輸入相手国だった。EUが輸入する穀物類の36%、油用種子類製品の16%をウクライナからの輸入が占めた。ロシアもまた、EUが輸入する飼料原料の20%の供給元であるなど、重要な貿易相手国だった。

実際、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が2022年2月下旬に始まって以降、穀物市場が高騰し、EUの農業従事者、消費者への影響が長引くことが懸念されている。3月21日に開催されたEU農水相理事会では、短期的な食糧供給不安についてだけでなく、EUの中長期的な食の安全保障・食料主権などについても協議が行われた(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。その後、欧州委が3月23日に、休耕地(注)での穀物生産を一時的に許可するといった対応策などを発表(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。休耕地の活用については、フランス公共放送の3月22日の報道によれば、一部の専門家から、緊急の穀物自給量の増加策としての効果は不十分で、環境への影響を指摘する声も上がっている。

(注)EUでは、休耕地が生物多様性保全に貢献するという考えから、共通農業政策(CAP)において、農業従事者に対し、グリーニング支払いを含めた直接支払い(所得支援)受給のため、耕地の5%以上の休耕地〔ecological focus area(環境重点用地)〕を設けることを義務付けている。

(滝澤祥子)

(EU、ロシア、ウクライナ)

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