EUの農産品・食品の域外貿易収支、2020年は引き続き黒字を維持

(EU)

ブリュッセル発

2021年04月08日

欧州委員会は3月31日、EU27カ国(注)の2020年の農産品・食品の貿易報告書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。それによると、EU域外への輸出額は1,843億ユーロ(前年比1.4%増)、輸入額は1,222億ユーロ(0.5%増)となり、貿易収支は620億ユーロ(3.3%増)の黒字になった。

輸出相手国を金額ベースでみると、英国(構成比:22.7%)、米国(11.6%)、中国(9.6%)が上位3カ国となった。特に中国は、前年比74%増加した豚肉のほか、小麦、乳児用食品が増加し、全体で22.2%増と伸び、過去最高の輸出額になった。日本への輸出額は69億9,700万ユーロ(構成比3.8%、前年比3.8%減)で5位だった。

輸入相手国を金額ベースでみると、英国(構成比:12.7%)、ブラジル(9.3%)、米国(7.8%)が上位3カ国となった。英国、米国、ウクライナ、インドなどからの輸入が前年に比べて減少した一方、カナダ(構成比2.5%)からの輸入は菜種およびデュラム小麦の輸入が著しく増加したことにより51.3%増と大きく伸びたほか、インドネシアやブラジルなどからの輸入も増加した。

米国の追加関税や英国のEU離脱の影響も出た2020年

欧州委は、EUの農産品・食品貿易にとって、2020年は引き続き貿易黒字を維持し、「安定した1年」と評したものの、品目別でみると、輸出額が大きく減少した品目もあった。特に大きく減少したのは、スピリッツ・リキュール類(前年比18.9%減)とワイン(ベルモット酒・サイダー・酢を含む)(8.1%減)で、欧州委は、外食産業の休業などの措置が取られた「新型コロナ危機」の影響だけでなく、EU・米国間の民間航空機紛争に端を発した追加関税もそれら品目の減少要因となったとした。なお、追加関税については、EUと米国が3月5日、4カ月間の一時停止を発表し、欧州の農業・食品業界では両者の関係改善への期待が高まっている(2021年3月11日記事参照)。また、英国については、EUからの輸出はやや増加(前年比1.1%増)したものの、英国からEUへの輸入は多くの品目で減少し全体で7.2%減となった。欧州委は、英国のEU離脱に伴う移行期間終了が2020年末に差し迫っていたことや「新型コロナ危機」などが、英国との貿易に影響を与えたと指摘しながらも、それぞれの品目ごとに、与えた影響を分析することは難しいとした。

(注)2020年1月末にEUを離脱した英国は、域外国として集計。前年比は英国を除く27カ国ベースで比較。

(滝澤祥子)

(EU)

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