ボリッチ大統領が就任、初演説で公正な社会実現に言及

(チリ)

サンティアゴ発

2022年03月17日

チリ中部のバルパライソにある国会議事堂で3月11日、大統領就任式が行われ、左派政党出身のガブリエル・ボリッチ新大統領が誕生した。任期は2026年3月までの4年間。式典にはアルゼンチンやペルー、ボリビア、ウルグアイ、パラグアイなどの大統領らとともに、日本から特派大使として小田原潔外務副大臣が出席した。外務副大臣は就任式に先立ってボリッチ大統領を表敬訪問し、その際に「ポケモン」関連のグッズを渡した様子が地元メディアに大きく報じられ、ツイッター上でも「日本(Japón)」がトレンド入りするなど注目を集めた。

就任式後、ボリッチ大統領はサンティアゴのモネダ宮殿前の憲法広場で初演説に臨み、主に富の再配分や人権尊重、新憲法を軸に公正な社会の構築に向けて取り組むと述べた。要旨は次のとおり。

〇富の再配分

国内の不平等をなくしつつ、経済回復を促進する。

〇人権の尊重

北部の移民流入問題(2022年2月25日記事参照)を重要課題として認識している。移民に対する人道的な配慮を忘れてはならない。

〇新憲法

南部の先住民問題については、対話、平和、法律、共感によって信頼を再構築する。現在進行中の新憲法制定プロセスを政府として全面的にサポートする。

国際関係では、中南米の国々との関係重視を挙げ、気候変動や移民問題、経済のグローバル化、エネルギー危機、女性への差別や暴力などの共通課題を近隣諸国と協力して取り組むことにも言及した。

加えて、3月11日には上下両院の議長の交代が行われ、上院は社会党(PS)所属のアルバロ・エリサルデ氏、下院は民主主義のための政党(PPD)所属のラウル・ソト氏がそれぞれ議長に就任した。ボリッチ大統領が率いる左派連合(Apruebo Dignidad)は、上院(議席数50)では5議席、下院(議席数155)では37議席を獲得している。ともに現政権を構成する中道左派連合(Socialismo Democrático)の議席数を含めても、上院で18議席、下院で67議席と、いずれも過半数には満たないことから、野党との政策協議が不可欠となる。

(岡戸美澪)

(チリ)

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