チリ、不法移民流入抑制のため、緊急事態宣言を発令

(チリ)

サンティアゴ発

2022年02月25日

チリ政府は2月15日、北部の4地域に対し緊急事態宣言を発令した。期間は15日間で、必要ならば延長可能となっている。同宣言が発令された地域は、アリカ・パリナコタ州のアリカ(アリカ市の一部を除く)とパリナコタ、タラパカ州のタマルガル、アントファガスタ州のエル・ロア(カラマ市の一部を除く)の4地域。これら地域はそれぞれアルゼンチン、ボリビア、ペルーとの国境に位置しており、近年、不法移民の入国が後を絶たなかった。2月15日付の官報によると、チリ警察が2020年に摘発した不法入国件数は8,219件だったが、翌年の2021年には1万6,879件と、2倍に増加していた。

今回、緊急事態宣言を発令するに至った背景には、チリ人トラック運転手の殺人未遂容疑で、ベネズエラ人不法移民3人が逮捕された事件がある。この事件をきっかけに、不法移民増加による治安の悪化を危惧したトラック運転手らがデモを行い、北部の主要道路を封鎖した。これにより、一部地域ではガソリンの供給網が滞り、またタラパカ州のイキケ空港と首都圏州のサンティアゴ空港間の航空便が3日間にわたってキャンセルされるなどの混乱が広がった。これらの事態を受けて、チリ政府はトラック運転手らと協議を行い、不法移民の流入を警察や軍によって統制することで合意したため、緊急事態宣言を発令するに至っている。

新移民法の規制を定めた法律が施行

政府は緊急事態宣言を発令する3日前の2月12日、2021年4月に施行した新移民法の細則(内務省令296号、2022年2月12日施行)を発表した。同規則は、外国人の出入国、滞在、居住に加え、その権利と義務に関する事項を盛り込んでいる。従来の法律では定められていなかった不法移民の国外追放についても言及されており、慢性化した移民問題解決の足掛かりとして期待されている。

(岡戸美澪)

(チリ)

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