2022/2023年度予算案を発表、財政赤字の縮小と公的債務の安定化を目指す

(南アフリカ共和国)

ヨハネスブルク発

2022年03月10日

南アフリカ共和国のイノック・ゴドングワナ財務相は2月23日、2022/2023年度予算案(2022年4月~2023年3月)を発表した。予算案では、財政赤字の削減と公的債務(グロス)の安定化に重点を置いており、ゴドングワナ財務相は「投資の促進、雇用の創出などを通して、財政の健全化に向けて軌道修正しつつ、経済的弱者に対する政府の支援を拡充する」と述べた。

2021/2022年度の実質GDP成長率見込みは4.8%のプラス成長だが、2021年の中期予算方針(2021年12月3日記事参照)で発表した5.1%からは0.3ポイントの下方修正となった。下方修正した要因は、新型コロナウイルスの第3、4波にともなう失業と投資の遅れ、電力不足、国内での暴動・略奪(2021年7月14日記事参照)だ。政府は、2022年のGDP成長率を2.1%と見込み、次の3年間は平均1.8%のプラス成長の予測を示した。

2021/2022年度の税収見込みは1兆5,500億ランド(約11兆7,800億円、1ランド=約7.6円)で、中期予算方針時の見込みを617億ランド上回る予定だ。1次産品価格の上昇による鉱業セクターの好調が、税収増に大きく寄与した。しかし、公的債務(グロス)は、2021/2022年度は4兆3,500億ランドに達し、中期的にも増加することが予測されている。今回増えた分の歳入は、歳出の赤字削減に充て、政府は債務を抱える国有企業の改革などを含めた様々な財政改革を加速したい考えだ。政府は、増え続ける公的債務(グロス)のピークを、前回の中期予算方針の予測より1年早い2024/2025年とし、75.1%までにとどめることを目指す。

ゴドングワナ財務相は、演説の中で「今は、増税して景気回復を危うくする時期ではない」と強調し、個人所得税はインフレ分のみの引き上げ、燃料税は据え置きとした。法人税は2023年から、一部条件付きで28%から27%に引き下げられる予定だ。ただし、酒税とたばこ税は前年に続き増税し、4.5~6.5%の引き上げとなった。

大手インベステック銀行のエコノミストは、債務は増加しているものの公的債務(グロス)がピークに達していないため、信用格付けに大きな変更はないだろうとの見解を述べた。

(堀内千浪)

(南アフリカ共和国)

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