前大統領の収監で暴動拡大、日系企業に影響も

(南アフリカ共和国)

ヨハネスブルク発

2021年07月14日

南アフリカ共和国のシリル・ラマポーザ大統領は7月12日、国内の暴力・破壊行為への対処に関する国民演説外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを実施した。クワズル・ナタール州および最大州・ハウテン州で拡大する商店・倉庫での略奪行為やインフラの破壊に厳正に対処するため、警察の支援として国軍を派遣すると発表した。

南アでは6月29日に、前大統領時代の汚職容疑で捜査・裁判が進められてきた前ジェイコブ・ズマ大統領に法廷侮辱罪が下され、同氏の15カ月の禁錮刑が決定した。7月7日にズマ前大統領が警察に出頭した後も、同氏の支持者らはこの決定への抗議を続けている。10日には、国内の物流の大動脈であるヨハネスブルクとダーバン港を結ぶ高速道路(N3)上で、トラックを放火するなど暴力的な破壊行為に発展した。その後、ズマ前大統領の支持者が多いクワズル・ナタール州のダーバンや最大都市ヨハネスブルクで、この騒動に乗じた市民が商店や倉庫を次々と襲撃し、略奪・放火をする事態に拡大した。南ア警察省の発表によると、7月13日までに両州で757人の逮捕者、10人の死者が出ている。

日系製造業企業への直接的な被害も

今回の騒動の影響により、ダーバンに倉庫を持つ日系製造業企業は7月12日に襲撃を受け、現在も従業員の安全を確保するため出勤・生産を停止するなど直接的な被害を受けている。また、現地日系物流企業によると、7月13日時点で前述の高速道路N3およびダーバン港は、実質的にほぼ機能停止に陥っており、今後物流の大幅な遅滞が見込まれるとのことだ。他方で、ヨハネスブルク離発着の航空貨物に関しては、現在のところ大きな影響はみられていないとのこと。

新型コロナウイルス感染拡大第3波の最中にある南アだが(2021年7月13日記事参照)、今回の治安の悪化により、物流のほか医療従事者の通勤確保や、ワクチン接種の遅れなどの問題も生じている。

(高橋史)

(南アフリカ共和国)

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