米運輸省、29億ドルのインフラ資金援助発表、注目はハドソントンネルプロジェクト

(米国)

ニューヨーク発

2022年03月28日

米国運輸省は3月23日、地方の主要インフラプロジェクトに対する総額29億ドルの資金援助計画を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。インフラ投資雇用法に基づく裁量的助成金からの支出で、1月も15億ドルの助成プログラムを発表している(2022年2月3日記事参照)。

今回は予算額を前回からほぼ倍増させており、従来の資金調達ではインフラの規模が大き過ぎるプロジェクトなどを主な対象とする。具体的には、複数の交通手段や、管轄区域にまたがる高速道路、橋、貨物、港湾、旅客鉄道、トンネルなどが対象になり得るとしている。採用された場合には、プロジェクトコストの最大50%の資金を助成する。2022年内に最大10億ドルを受け取ることができることに加え、複数年に及ぶ資金提供を予定しているという。申請期限は5月23日までとなっている。

今後の申請が見込まれるプロジェクトの中で注目されるのは、ニューヨーク(NY)市とニュージャージー(NJ)州を結ぶハドソントンネルプロジェクト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますだ。これはNY市とNJ州の間を流れるハドソン川の下を通る鉄道トンネルを改修するとともに、新たなトンネルも建設する計画で、総工費は約120億ドル、2023年8月の着工が目指されている。インフラ投資雇用法から別途の手当があるなど、同プロジェクトの資金ファイナンスは連邦政府や州政府などから行われているものの、いまだ全額を賄うに至っていないとされる。2021年6月に既存トンネルを視察したピート・ブティジェッジ運輸長官は今回の援助計画の発表で「ハドソン川のトンネルで私が見たのはこのトンネル改修の緊急性だ。新しい資金調達計画の申請の中にこのプロジェクトが含まれることを期待している」と述べている(3月23日NJドットコム)。

実際に、既存トンネルは2012年10月に東海岸を襲ったスーパーストーム・サンディの影響によるハドソン川の氾濫で大きな被害を受けており、気候変動リスクが一層高まる中、既存トンネルの改修と新規トンネル建設は急務だ。建設計画ではまず新規トンネル建設を先行させ、完成後に既存トンネルの改修に当たるとしており、工事完了にはかなりの時間を要する見込みだが、NY市とNJ州を結ぶ主要交通インフラとしての重要性とその安全性の観点から、早期の工事着工・完了が望まれる。

(宮野慶太)

(米国)

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