バイデン米政権と運輸省、サプライチェーン最適化に向けた取り組みを発表

(米国)

ロサンゼルス発

2022年03月22日

米国のバイデン政権と運輸省(DOT)は3月15日、サプライチェーンの最適化に向けて「Freight Logistics Optimization Works(FLOW)」を発表した外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。「新型コロナ禍」で長期化しているコンテナ貨物の遅延解消とコストの削減を目的として、運輸省や港湾当局、民間企業が連携し、サプライチェーンの各パート(地点)の重要な情報の交換を試験的に行うとしている。

初回の試験では、港湾局や輸送に携わるターミナルオペレーター、鉄道、トラック、倉庫、輸送業者や荷主など民間企業を含めた18社・団体(注)が参加する。

初期参加者を集めた意見交換会では、サプライチェーン全体の輸送情報の透明性が向上することは、個々の企業のみならずより広範なシステムに利益をもたらし、無駄を省き、消費者のコストを削減するという意見や、現行の情報システムツールは機能しておらず、出荷から棚に並ぶまでの貨物の流れの可視性を向上するためにも、民間企業による投資や協力を必要とするとの指摘がなされた。

全国5,000以上の中小企業を顧客に抱えるトゥルーバリュー(ハードウエア小売店)は、同イニシアチブ立ち上げを記念したピート・ブティジェッジ運輸長官との対談の中で、「中小企業には大企業のような大型の需要やサプライチェーンはなく、費用対効果の高い方法で効率的に商品を配送できることが非常に重要で、このデータ共有イニシアチブで何が可能になるのか楽しみにしている」と、同イニシアチブが中小企業に与える好影響への期待を述べた。

発表資料によれば、これまでのサプライチェーン逼迫解消の努力により、例えば、ロサンゼルス港とロングビーチ港の埠頭で長期滞留する輸入コンテナの数が、2021年11月から現在までに約60%削減されたとしている。他方、米国の小売製品の主要輸入港における2022年上半期の輸入コンテナ量の見通しは、前年同期比1.5%増加となっているほか(2022年2月15日記事参照)、サプライチェーン逼迫に関する指標GSCPIは、2月に3.31と2カ月連続で低下したものの、いまだ歴史的に高い水準にある(2022年3月8日記事参照)。加えて、緊迫化するウクライナ情勢により、ロシア向け貨物が次々と停止されていることから、これがサプライチェーン全体を再び逼迫させる恐れもある。

今回のイニシアチブでは今夏までの貨物情報交換を目指すとされており、実行にはまだ時間を要する見通しとなっているが、今回の官民連携による取り組みを通じて、過去にない物流のデジタル化の発展が期待される。

(注)初期参加組織・企業

  • 港湾局:ロングビーチ港湾局、ロサンゼルス港湾局、ジョージア州港湾局
  • 海運業:CMA CGM、MSC
  • ターミナルオペレーター:フェニックス・マリンターミナル(Fenix Marine Terminal)、グローバル・コンテナターミナルズ(Global Container Terminals)
  • 民間企業・組織:アルバートソンズ(Albertsons)、ジェミニ・シッパーズ(Gemini Shippers)、ランド・オレイクス(Land O’ Lakes)、ターゲット(Target)、トゥルー・バリユー(True Value)
  • コンテナの輸送設備車両(シャーシ)業者:DCLI、フレキシィバン(FlexiVan)
  • 運送・倉庫業:フェデックス(FedEx)、プロロジス(Prologis)、UPS、CHロビンソン(CH Robinson)

(サチエ・ヴァメーレン)

(米国)

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