上半期の米主要港の輸入コンテナ量見通しは前年同期比1.5%増、物流混乱長期化への懸念高まる

(米国)

ニューヨーク発

2022年02月15日

全米小売業協会(NRF)と物流コンサルタント会社のハケット・アソシエイツは2月9日、米国の小売製品の主要輸入港(注1)における2022年上半期の輸入コンテナ量の見通しを発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。発表によると、2022年上半期の輸入コンテナ量の見通しは、前年同期比1.5%増の1,300万TEU(20フィートコンテナ換算)となり、2021年上半期の1,280万TEUをわずかに上回ると予測されている。新型コロナウイルスの感染拡大により、アジアで多くの工場が閉鎖され、米国でも小売業者が店舗の閉鎖を迫られた2020年上半期から、2021年上半期の輸入コンテナ量は前年同期比35.7%の増加を記録したが、2022年上半期は伸びが緩やかになると見込まれている。

ハケット・アソシエイツの創設者、ベン・ハケット氏は「今月はアジアでの旧正月に伴って工場が閉鎖されており、輸出量が減少するため、北米のターミナルは既存の混雑を緩和する機会となる」と述べる一方、「物流ターミナルが貨物を効率的に最終目的地まで移送できず、スペースの不足に直面し続ける限り、混雑はすぐには解消されないだろう」と付け加えた。米国では、オミクロン株による感染の勢いは鈍化しているが、配送拠点や倉庫での設備、人材、保管スペースの不足は依然として継続しており、深刻な問題になっている。NRFのサプライチェーン・税関担当バイスプレジデントのジョナサン・ゴールド氏は「多くの専門家は、物流の混乱が2022年中は続くと予想している」と指摘した。

米国では、特に西海岸の港湾で物流の停滞が深刻化していたが、こうした状況は東海岸の港湾にも広まっている。サプライチェーンにおける輸送情報の可視化を手掛ける「プロジェクト44」によると、1月下旬時点で、サウスカロライナ州チャールストン港では15日以上集荷を待っているコンテナが7,000個を超え、前月に比べて40%増加している。また、ジョージア州サバンナ港では、ターミナルのスペースを確保するために、ポップアップ(注2)施設を含む、新たなコンテナ保管場所を開設するなどして需要の増加に対応している。西海岸のロサンゼルス港とロングビーチ港では、物流の停滞がさらに長期化する恐れがあり、バイデン政権は両港で混雑解消に向けた取り組み(2021年10月14日記事参照)を行っているが、両港への入港を待つコンテナ船は直近2カ月で約100隻に上っている。関係当局によると、1月上旬時点で、新型コロナウイルス関連の理由により約10%に当たる約800人の港湾労働者が欠勤している(「ウォールストリート・ジャーナル」紙2022年1月28日)。こうした状況の下、主要港湾の処理能力の低下も深刻な問題になっており、今後の動向が引き続き注目される。

(注1)主要輸入港には、米国西海岸のロサンゼルス/ロングビーチ、オークランド、シアトル、タコマ、東海岸のニューヨーク/ニュージャージー、バージニア港、チャールストン、サバンナ、エバーグレーズ港、マイアミ、ジャクソンビル、ガルフ海岸のヒューストンの各港が含まれる。

(注2)空きスペースなどを利用して、短期的に開設する形態。

(樫葉さくら)

(米国)

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