インド政府、「国家水素ミッション」の具体化に着手

(インド、日本)

ニューデリー発

2022年03月07日

インド電力省は2月17日、二酸化炭素(CO2)を排出しない新たなエネルギー源であるグリーン水素・アンモニア政策外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。モディ首相は、2030年までにグリーン水素の年間生産量を500万トンにまで増やすことを目標とした「国家水素ミッション」の策定を2021年8月に発表していたが、今回の政策はその具体的な計画を示したものだ。グリーン水素・アンモニア生産者が、再生可能電力の購入や再生可能エネルギー容量の拡張を自由に行うことができることや、すぐに消費しない再生可能電力を最長30日間まで流通会社に預けられることなどが規定されている。

世界的な脱炭素の流れの中で、インド政府は2070年までにカーボンニュートラルを目指すことを2021年11月に宣言しており(2021年11月5日記事参照)、これに向け2030年までに500ギガワット(GW)の電源を非化石燃料由来とする方針も掲げている。水素・アンモニアは、余剰分の電力も変換すれば貯蔵が可能となる再生可能エネルギーキャリアとして、インド政府が注目する分野の1つだ。

日本は官民共同で「日印クリーン水素月間」を推進

水素分野で先端技術を持つ日系企業は、インドでの新しい事業機会を模索する動きをみせている。在インド日本大使館は2022年2月から4月までを「日印クリーン水素月間外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」と位置付け、水素に係る日印連携を促す期間とした。

第1弾として、ジェトロはインド工業連盟(CII)と共催で、2月24日に日印水素ビジネスマッチングイベントを開催した。インドからはACME、JSWスチール、KPIT、国家火力発電公社(NTPC)、日本からは旭化成、東芝、三菱パワー、丸紅と、日印双方から水素の社会実装に高い関心を有する企業が参加し、それぞれ水素事業に関する現状の取り組み状況と今後の展望について紹介した。同イベントには日印両国の政府関係者も出席し、インドの新・再生可能エネルギー省は冒頭で、水素の製造装置に対する投資促進のため、産業界に対する水素利用の義務化を検討していることを明らかにした。また、利用の義務化により水素の需要が創出できれば、水素発生装置などの量産が実現し、水素の生産コストが下がり、長距離輸送や製鉄といった領域に水素が活用されていくような環境整備にもつながるとした。日本の資源エネルギー庁からは、日本が水素事業に協力していく上で必要不可欠な知的財産の保護や、適切なインセンティブの付与などといったサポートをインド政府にも期待する旨の言及があった。

「日印クリーン水素月間」の期間中、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)や日本エネルギー経済研究所による、セミナーやワークショップなども行われる。人口の多いインドで再生可能エネルギーの需要が高まることを見据え、日系企業によるインド国内の水素事業への参画を官民共同で推進することが狙いだ。

(大瀧拓馬、広木拓)

(インド、日本)

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