NXバングラデシュに聞く、物流の現状

(バングラデシュ)

ダッカ発

2022年03月18日

世界的なコンテナ不足などによる輸送の遅延と運賃高騰は、依然としてバングラデシュ進出日系企業にとっても深刻な課題となっている。ジェトロは2021年末(2021年12月23日記事参照)からの情勢の変化や新たな取り組みについて、NXバングラデシュ(旧・バングラデシュ日本通運)の担当者に聞いた(3月10日)。

(問)海上輸送の現状について。

(答)アジア域内の運賃は2021年12月以降、さらに高騰している。例えば、上海~シンガポール間の2月の海上運賃は中国の春節(旧正月)による荷動きの低下により、前月比では若干下落がみられたものの、「新型コロナ禍」との比較では、約10倍の水準まで上昇している。この背景には、東南アジア諸国でのロックダウン後の生産回復による輸送需要増がある。また、一部の中国系船社を中心として、アジア航路で利用していた中・小型船を欧州・米州向け航路にシフトしたことよる供給減に伴う値上げも挙げられる。3月以降、春節後の荷動き回復に伴い、さらなる需給の逼迫が見込まれ、バングラデシュ~日本間の海上輸送への影響も懸念される。またチョットグラム港での滞船・バース待ちは依然課題であり、大きな改善はみられていない。

(問)主要な貿易相手国である欧米や中国、日本とバングラ間の主要経由地シンガポールの港の状況は。

(答)北米のコンテナ船の混雑は一層悪化している。米国西海岸の港では、予定の船に搭載されずに滞留している貨物(バックログ)対策のため、臨時船が投入されており、これが沖待ちに拍車をかけている。米国西海岸・東海岸航路の運賃はいずれも高止まりの状況だ。欧州航路も混雑状況や運賃高騰ともに、明るい見通しは立っていない。他方、バングラデシュからイタリアに直行する船が開始されたが、チョットグラム港への入港までに1週間程度の沖待ちが発生していることや、不定期運航であることに留意する必要がある。シンガポール港のハンドリング状況に大きな変化はなく、ヤード内の滞貨増と港湾作業員不足は解消されていない。

(問)航空輸送の現状はどうか。

(答)バングラデシュ発着の旅客便数は徐々に回復しているものの、海上輸送の不安定なスケジュールによる航空輸送への切り替えも多くみられる。高まる需要に対して貨物運搬のスペースは依然不足しており、運賃も高止まり(平常時の3~5倍程度)だ。また、当地からの輸出に際し、到着地の空港での貨物スペース不足によって臨時の保管スペースを設ける必要性が生じ、貨物の引き取りに時間を要しているといった事例も発生している。

(問)今後の見通しは。

(答)これまで以上に悪化している側面もある中、さらに「新型コロナ禍」の輸送遅延・運賃高騰、物流の混乱が常態化する懸念もあり、先行きは一層不透明な状況とみている。

(問)関連の貴社の取り組みについて。

(答)これまでバングラデシュ発のみに提供していた海上・航空の複合輸送〔NXバングラデシュのAIR & SEAサービス(注)〕は、中間商品といえる。物流環境の悪化に対応するため、当地着の貨物輸送についても限られた条件ではあるが、工夫もしている。例えば、複合輸送に加えて、船会社のサービスを組み合わせる(発地から経由地までは船会社Aを利用し、経由地でコンテナを入れ替え、経由地からバングラデシュまでは船会社Bを利用する)といったフォワーダーならではのサービス導入を進めている。バングラデシュ着のスペースが航空輸送・海上輸送ともにタイトであること、前述のチョットグラム港の混雑や遅延といった課題があるため、抜本的な解決策にはならないが、経由地での滞留をできる限り避けられるような対策を実施している。

(注)航空輸送のみよりは安く、海上輸送のみよりはリードタイムが短い輸送サービス。

(山田和則)

(バングラデシュ)

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