議会がトーレス内閣信任決議案を承認、政権汚職疑惑への説明はなし
(ペルー)
リマ発
2022年03月14日
ペルー議会は3月8日の本会議で、2月8日に発足したペドロ・カスティージョ大統領の第4次改造内閣であるアニーバル・トーレス首相内閣(2022年2月14日記事参照)の信任決議案を賛成64票、反対58票、棄権2票で承認した。政党別では、与党ペルー・リブレ(自由ペルー:PL)党(31人)やフントス・ポル・エル・ペルー(ペルーとともに:JPP)党(5人)、ペルー・デモクラティコ(ペルー民主主義:PD)党(6人)など左派党派所属の全議員が賛成票を投じたほか、中道派のアクシオン・ポプラール(人民行動:AP)党、アリアンサ・パラ・エル・プログレッソ(進化のための同盟:APP)党、ソモス・ペルー(われわれはペルー:SP)党、ポデモス・ペルー(出来るぞペルー:PP)党などの一部が賛成に回った(党派別の投票結果は添付資料表参照)。
2時間に及ぶトーレス首相による信任決議案の説明はまず、カスティージョ政権の就任後7カ月間の実績として、3月7日時点で新型コロナウイルスのワクチン接種完了者(2回)が接種対象人数の75.9%を占める2,480万人、3回目ブースター接種数が同33.2%の1,080万人、小児用ワクチン接種完了数が同41.8%の320万人に達していると、新型コロナ感染対策の成果を述べた。また、10の政策軸(注1)に沿って「2022年実質GDP成長率3.5~4.0%の達成」「中小零細企業の設備投資補助」「産業クラスター支援」「労働法の改正(組合権利など)」「科学技術イノベーション省と科学技術イノベーション基金(FONACTI)の創設」「公立学校教員の最低賃金改正」「新型コロナワクチン6,300万回分の年内輸入」「医師の二重公的雇用(2つの公的医療機関での従事)の認可」「104の農村地区の電力開発計画」「第二次農業改革(中小農家支援、水資源基金の創設など)」などの各種政策を示した後に、国民のために合意形成を呼び掛け、発表を締めくくった。
一方、反対票を投じた野党陣営からは、これまでの政府内の汚職疑惑(注2)に対する説明がなかったことへの批判が集中。また、元経済財政相でエコノミストのアルフレード・トルネ氏は「ヘスティオン」紙の取材に対して、トーレス内閣の掲げる数々の支援策の予算の裏付け説明がなく、実効性について疑問を呈している。当初の想定に反して議会承認を得たトーレス内閣だが、信任決議前の大統領府への訪問者に野党陣営の名前があることから、各党派との裏取引やカスティージョ大統領に議会解散権利(信任決議2回否決で大統領は解散権を得る)を与えるリスクを嫌った可能性もささやかれている。
(注1)(1)食料安全保障を伴う社会福祉とセーフティーネット、(2)経済と農業農村開発を伴う生産活動の再活性化、(3)科学技術とイノベーションの推進、(4)教育制度の強化と学習回復、(5)地方分権と公的機関とサービスの強化、(6)民主主義体制、治安維持、汚職・麻薬・テロ活動撲滅活動の強化、(7)人権と環境に対する脅威リスクの管理強化、(8)平等のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進、(9)自立的・民主主義的・社会的・地方分権型の外交政策の遂行、(10)多民族文化の尊重と促進。
(注2)運輸通信省(MTC)内での入札汚職問題(既に当時の大臣は辞任)や保健相による専門分野詐称、偽健康水販売問題など。
(設楽隆裕)
(ペルー)
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