財政部、2022年内は不動産税の施行導入をしない方針表明

(中国)

北京発

2022年03月24日

中国財政部の責任者は、2022年内は不動産税改革の試験都市を拡大するための条件が整わない、との見解を示した。同年内には、不動産税の試行導入を行わない方針とみられる。同責任者は「不動産税の試験導入に関して一部の地域において調査と初歩的な検討を進めたが、各方面の状況を総合的に考慮した」とコメントした。同責任者の見解は、新華社が取材して得たコメントとして報道した(「新華社」3月16日)。

不動産税の改革試行については、全国人民代表大会(全人代)常務委員会が2021年10月23日、国務院が試行地域を決め、具体的な試行弁法の施行後5年間を試行期間として実施することなどを決定しており、試行地域の選定が注目されていた(2021年11月9日記事参照)。

他方、2022年3月5日に李克強首相が発表した2022年の政府活動報告では、不動産税の試験導入に言及しなかった。また、劉鶴副首相が3月16日に主催した国務院金融安定発展委員会では、不動産企業のリスクの予防・解消への有効な対策の検討・提示と新たな成長モデルに向けた関連政策の策定を急ぐことを強調したほか、各部門に対し、市場の期待にとってプラスとなる政策を打ち出し、引き締め効果を有する政策を打ち出すことを控えるよう呼び掛けるなど、不動産市場の安定を重視する姿勢があらためて強調されていた(「新華社」3月16日)。

上海交通大学住宅都市農村建設研究センターの陳傑主任は「国内経済や新型コロナウイルス、国際情勢などの複数のリスクを同時に抱えている影響で、経済成長と不動産市場の安定が2022年の中国経済の主な課題になっている」とコメントした(「澎湃新聞」3月16日)。そのうえで、「不動産業は関連産業が多く、不動産税が期待される効果を生み出すには適切な経済・社会環境が必要だ。不動産税は不動産をコントロールするための長期的なメカニズムの重要な要素だが、現在の政策環境は不動産税の導入には適しておらず、今年は導入を暫定的に見合わせたうえで適切なタイミングで実施することになるだろう」と指摘した。

58不動産研究院の張波院長は、不動産税改革の試行は「課税を通じて経済を有効にコントロールし所得分配を調節するほかに、不動産市場の安定で健全な発展にも大きな影響を及ぼす」と分析し、「現在、不動産市場が徐々に安定した段階に向かっている中で不動産税の試行を加速することは、市場の短期的な安定にとってマイナスに働く」と指摘した(「澎湃新聞」3月16日)。なお、今後の見通しについては、「不動産税の試験導入期間を5年間としているため、今後数年内のより適切な時期に実施するだろう」との見方を示した。

(張敏)

(中国)

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