2021年のGHG排出量、交通と建設分野で上限超過、気候保護目標の達成への包括的対策が必要

(ドイツ)

デュッセルドルフ発

2022年03月24日

ドイツ連邦環境庁および経済・気候保護省は3月15日、2021年の温室効果ガス(GHG)排出量〔二酸化炭素(CO2)換算、以下同様〕の速報値を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。国内における総排出量は前年比4.5%増の7億6,159万トン、1990年比では38.7%減となり、気候保護法で定めるGHG排出量の上限を交通分野と建設分野で超過した(添付資料表参照)。

分野別にみると、エネルギー分野は前年比12.4%増の2億4,729万トンと大きく増加した。特に、風力発電量の大幅減による再生可能エネルギーの発電量の減少や、総電力消費量の増加により褐炭・石炭火力発電によるGHG排出量が大きく増加したことが主因。製造分野は、前年比5.5%増の1億8,129万トンとなった。「新型コロナ禍」からの経済回復により化石燃料の使用量が増加し、新型コロナウイルス感染拡大前の2019年の水準(1億8,330万トン)まで近づいた。一方で、気候保護法で定める2021年のGHG排出量の上限の1億8,200万トンはわずかに下回った。交通分野は、前年比1.2%増の1億4,806万トンだった。新型コロナ感染拡大前の2019年と比較すると乗用車の交通量は少ない水準にあるが、高速道路における道路貨物輸送がわずかに上回った。また、気候保護法で定めるGHG排出量の上限を306万トン超過した。建設分野では、前年比3.3%減少の1億1,545万トンとなったが、前年に続き気候保護法で定めるGHG排出量の上限を超えた。

経済・気候保護省のパトリック・グライヘン副大臣は「再生可能エネルギー拡大の大幅な加速が最も重要だ」と指摘した。ロシアのウクライナ軍事侵攻により、安全保障とエネルギー供給が密接に結びついていることが明確になったとしたうえで、「風力・太陽光発電の普及のための全ての障害を迅速に取り除き、全ての分野における脱化石燃料化を図らなければならない」と述べた。

GHG排出量は2010年以降、毎年平均2%弱が削減されてきた。一方、連邦政府が掲げるGHG排出量を2030年までに対1990年比で65%削減する目標(2021年7月6日記事参照)の達成には今後、年間6%削減する必要がある。2021年までのGHG排出量データは、気候保護法で定められるとおり、気候保護専門委員会により審査される。同委員会は1カ月以内に評価結果を発表する。その後、今回、法律で定めたGHG排出量の上限を超えた分野(交通分野と建設分野)の担当省庁は3カ月以内に目標達成に向けた対策案を提出する。なお、連邦政府は既に同対策を含む即時プログラム(2022年1月18日記事参照)に取り組んでいる。

(ベアナデット・マイヤー、作山直樹)

(ドイツ)

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