政府、排出量削減スピードの3倍速に向け気候保護施策案の一部発表

(ドイツ)

デュッセルドルフ発

2022年01月18日

ドイツのロベルト・ハーベック経済・気候保護相は1月11日、今後の気候保護政策に関する報告書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した(同省プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。同報告書によると、現状の気候保護対策は全ての分野において不十分で、改正気候保護法(2021年7月6日記事参照)が定める2022年および2023年の分野別許容排出量が幾つかの分野で達成できない見込み。また、改正気候保護法は、2030年までに温室効果ガス(GHG)排出量を1990年比65%削減と定めるが、現状の対策のままでは約50%減にとどまる予想。GHG排出量は過去10年間で年平均1,500万トン減少した一方、2030年まで毎年平均3,600万~4,100万トン削減する必要があるため、ハーベック経済・気候保護相は「排出削減スピードを3倍ほど加速しなければならない」と強調した。

電力需要に占める再生可能エネルギーの割合は、2010年の17%から2021年に42%強に増加した(2021年12月24日記事参照)。連邦政府は、連立協定書で示した2030年までに同比率を80%に高める目標(2021年11月26日記事参照)の達成に向けて(添付資料表参照)、再生可能エネルギーの拡大を抜本的に加速させ、障害や障壁を取り除くことに務める。

陸上風力発電を増やすことは、再生可能エネルギーの拡大において最も大きな課題となる。報告書は、上述の政府目標値達成には2030年までに現在の2倍以上となる100ギガワット(GW)以上の設備容量が必要と試算するが、幾つかの州が定める風力発電所と住宅との最小距離に関する規制などにより、陸上風力発電所が設置できる面積は2020年末時点で国土の0.5%にとどまる。このため、陸上風力発電所を設置できる面積を国土の2%まで広げるための法整備を進めるほか、州や自治体との協力を深める予定。また、2030年までに太陽光発電の設備容量を現在の3倍以上となる200GWに増やし、商業用施設などの新築時に太陽光パネルの設置を義務化し、それ以外の民間用施設などの新築時にも太陽光パネル設置を原則とする方針。このほか、洋上風力発電も拡大する。消費者の負担軽減のため、再生可能エネルギー賦課金(EEG賦課金)を2023年に廃止しその分を連邦財政で賄うことにより、電力価格を引き下げる予定。

さらに、発電に利用する天然ガスの使用量を徐々に減らし、一部をグリーン水素に代替させるため、2030年までに電解槽の拡大目標を現在の2倍となる10GWに増加させる。これに関し、2022年中に「国家水素戦略」(2020年9月9日付地域・分析レポート参照)を改正し、追加的な支援プログラムを開始する予定。

連邦エネルギー・水道事業連合会(BDEW)など経済団体からは評価する意見も示される一方、一部のシンクタンクは、今回発表された計画でもパリ協定で掲げられている気温上昇を1.5度に抑える目標の達成にはいまだ不十分と指摘している。

今回の報告書は、気候変動対策の「即時プログラム」案の一部で、今後数カ月の間にさらなる施策を加える。具体的には、連邦政府は4月末までに気候変動対策に関する法規則や支援制度をまとめた第1次気候保護パッケージ、夏ごろに第2次気候保護パッケージを発表する予定。

(ベアナデット・マイヤー)

(ドイツ)

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