米財務省、国内アルコール市場の報告書発表、寡占状態による消費者の不利益を指摘

(米国)

ニューヨーク発

2022年02月17日

米国財務省は2月8日、ビール、ワイン、スピリッツのアルコール市場の競争状況に関する報告書を公表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。報告書は7月に出された米国経済における競争促進についての大統領令を受けたもので、司法省(DOJ)と連邦取引委員会(FTC)との協議の上で作成された。

報告書によると、国内の上記のアルコール市場の規模は年間2,500億ドルに上るとしており、ビールの醸造所は6,400カ所以上、ワイナリーは約6,600カ所、蒸留所は約1,900カ所が運営されている。近年はいわゆる小規模な「クラフト」メーカーの大幅な増加が見られる一方、過去10年間で企業間の統合が進んでおり、ビール市場で言えば、アンハイザー・ブッシュ・インベブ(本社:ベルギー、米国本部:ミズーリ州セントルイス)とモルソン・クアーズ(本社:イリノイ州シカゴ)の2つの醸造所がビール売り上げの65%を占めていると指摘、現行の規制も作用して大企業による価格支配力が高まったとしている。米国のアルコール市場では、価格競争や市場参入が規制により制限されているため、寡占による価格支配の高まりと健全な価格競争の欠如によって消費者に不利益が生じており、健全な競争があった場合に比べて、ビールの価格は最大30%高くなっており、米国のビール消費者は年間で最大4億8,700万ドル多く支払っていると指摘している。ワインやスピリッツにも同様の問題が発生しており、健全な競争があった場合に比べてワインでは最大18%、スピリッツでは最大32.5%、価格が高くなっているとしている。

こうした現状と分析を踏まえて、報告書では、小規模企業の参入を促して市場を健全化させるために、司法省と連邦取引委員会はアルコール市場における独占禁止法適用の精査を継続すべきとしており、具体的には、大企業による小規模企業の買収提案をより詳細に検討する必要があるなどとしている。また、報告書では、実際に企業への監督や規制を行っている各州に対しても、小規模企業への規制やフランチャイズ規制の反競争的影響を精査していく必要があると指摘している。

米国の日本食市場の中でも、日本酒や焼酎などのアルコール製品は人気があり、食品商談会や見本市などが活況を見せている(2021年10月5日記事10月26日記事参照)。米国のアルコール市場の健全な競争は、こうした日本酒などの売れ行きにも影響すると考えられ、今後の議論に注目が集まる。

(宮野慶太)

(米国)

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