2021年の農林水産物・食品輸出額が1兆円到達、前年比25.6%増

(日本)

農林水産・食品市場開拓課

2022年02月10日

日本の農林水産省が2月4日に公表した「農林水産物輸出入情報」によると、財務省貿易統計に基づく2021年の農林水産物・食品輸出額(確報値)は、前年比25.6%増の1兆2,385億円(少額貨物輸出額756億円を含む)となった。2006年に政府が年間輸出額1兆円を目標と定めて以降、初めて1兆円を突破した。

輸出額上位3品目は、1位がアルコール飲料(1,147億円、前年比61.4%増)、2位はホタテ貝(639億円、2.04倍)、3位は牛肉(くず肉を含む)(537億円、85.9%増)となった。国税庁によると、日本産酒類の輸出金額は10年連続で過去最高を更新しており、ウイスキーおよび清酒が、それぞれ462億円(70.2%増)、402億円(66.4%増)だった。主な輸出先の中国や米国の外食需要が回復したことに加えて、家庭内需要やEC(電子商取引)販売が増加したことも要因とみられる。また、ウイスキーは、世界的な知名度の高まりにともない単価が上昇傾向にあることが、輸出額の拡大に貢献している。

輸出額上位3カ国・地域は、1位が中国(2,224億円、前年比35.2%増)、2位は香港(2,190億円、6.0%増)、3位は米国(1,683億円、41.2%増)となった。比較可能な2005年以降、最大の輸出相手国・地域は香港だったが、初めて中国が首位になった。香港向け輸出が伸び悩んだ要因の1つには、現地の会食需要の減少により、高級食材の乾燥ナマコ(調製)(14.4%減)や、貝柱調製品(16.6%減)の輸出額が減少したことが挙げられる。その一方で、中国や米国などでは経済活動が回復傾向に向かい、外食需要も回復してきたことから、前述のアルコール飲料(中国向けは85.2%増、米国向けは72.0%増)に加えて、ホタテ貝(中国向けは2.3倍、米国向けは3.8倍)や、牛肉(米国向けは2.4倍)の輸出額が大幅に増加したことで、両国向けの輸出拡大を後押しした。

2021年の台湾向け輸出額は1,245億円で、中国、香港、米国に続き4位。2022年2月8日に台湾当局は、東京電力福島第1原子力発電所の事故発生後に導入された日本産食品への輸入規制措置の緩和案を発表した(2022年2月9日記事参照)。これまで輸入停止となっていた福島県、茨城県、栃木県、群馬県および千葉県の産品について、キノコ類や野生鳥獣肉などを除き、輸入を可能とする内容で、実現すれば2022年の台湾向け輸出額のさらなる拡大が期待される。

新型コロナ禍が続く中で、世界中の物流が混乱し、外食需要が減少したことを考慮すると、1兆円の大台を突破した意義は大きい。政府は、農林水産物・食品の輸出額を2025年に2兆円、2030年に5兆円の達成を目指している。

(上嶋友也)

(日本)

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