スペイン、ウクライナ情勢受けエネルギー価格高騰の長期化を強く懸念

(スペイン、ウクライナ、ロシア)

マドリード発

2022年02月25日

スペイン政府は2月24日のロシアによるウクライナへの軍事行動を受け、国家安全保障会議を緊急開催した。ペドロ・サンチェス首相は同会議後の声明で「これは不当かつ前例のない重大な侵略であり、世界の安全保障と安定を危険にさらす明白な国際法違反」と強く非難。ウクライナの領土の一体性と主権をあらためて支持するとともに、「全力で平和維持に努める」と述べた。スペインはウクライナ情勢が緊迫化した1月下旬以降、NATOとの協調の下、ロシア国境地域付近に兵力や戦艦、戦闘機を派遣している。

欧州委にエネルギー価格高騰への対策求める

また、サンチェス首相はロシアへの経済制裁により、スペインやEU諸国の経済、特にエネルギー市場が大きな影響を受けるとの懸念を示し、「家計や企業、産業、新型コロナウイルス禍から回復を始めたばかりの経済への打撃を軽減するための措置を講ずるよう、EUに求めていく」と強調した。

スペイン石油ガス備蓄協会によると、スペインは天然ガスの輸入の4割強がアルジェリア産で、ロシアへの依存は限定的だ。ロシアから欧州向けの供給が一時停止しても、影響は極めて軽微だ。国内には欧州の液化天然ガス(LNG)受け入れ基地の約3分の1に相当する6カ所が立地するほか、アルジェリアと2本のガスパイプラインで接続されており、多様な供給源から調達できる。

テレサ・リベラ第3副首相兼環境移行・人口問題相は24日の下院で、「エネルギー供給は保障されている。スペインが大きな影響を受けるのは、国際価格の高騰によるエネルギー価格全般のさらなる高騰だ」と警告を繰り返した。

再生可能エネルギー発電の導入を急速に進めるスペインでは、卸売り電力価格の高騰が特に深刻だ(2022年1月19日記事参照)。卸売り電力市場では、バックアップ電源が稼動する場合、その価格が市場価格となる。再エネ電力もその価格で取引されるため、天然ガスを燃料とするコンバインドサイクル発電のコスト上昇が卸し発電価格に影響し、電力価格は過去最高水準で推移している。

スペイン政府は2021年後半から、電力料金の各種減税や、卸売り電力市場における再エネ・原子力発電事業者の売電額カット、困窮層への電気料金引き下げなど、あらゆる手を打ってきた。しかし、電気料金の上昇は食い止められていない。同年秋からEU共通の卸売り電力価格決定システムの抜本的な改革を提案してきたが、加盟国の多数派の支持は得られていない。

21日にスペインを公式訪問した欧州委員会のカドリ・シムソン委員(エネルギー担当)は「現在の卸売り電力価格決定システムには改革の余地もある」との認識を示した。ウクライナ情勢の緊迫化に伴い、エネルギー価格高騰の長期化懸念が高まったことで、欧州委がガス・電力価格の引き下げに本腰を入れるとの期待も強まっている。

(伊藤裕規子)

(スペイン、ウクライナ、ロシア)

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