カナダ、ロシアへ金融・経済制裁を発動
(カナダ、ロシア、ウクライナ)
トロント発
2022年02月24日
カナダのジャスティン・トルドー首相は2月22日、ウクライナ東部でロシアに隣接するドネツク、ルガンスク地域(注)の独立をロシアが承認したことを受けて(2022年2月22日記事参照)、金融・経済制裁措置を発動するとともに、北大西洋条約機構(NATO)を通じた追加派兵を行うことを発表した。
金融・経済制裁は、「特別経済措置(ロシア)規則」および「特別経済措置(ウクライナ)規則」に基づくもので、措置は以下のとおり。
- ドネツクとルガンスクの独立承認に賛成票を投じたロシア連邦議会議員への制裁
- ドネツクとルガンスクの非政府支配地域に対する取引を禁止し、同地域でカナダ人が特定取引や活動に従事することを事実上禁止
- ロシア・ソブリン債の新たな直接・間接取引の禁止
- ロシアの2つの大手金融機関への制裁によるロシアの攻撃的な行動への資金供給の阻害
また、東欧でのNATO軍事同盟を強化するため、現在、欧州に展開する約800人に加えて460人が追加派遣され、今後NATOの要請があれば、さらに約3,400人のカナダ軍兵士が派遣されることになっている。
トルドー首相は今回の発表に関し、「ロシアの最近の行動は、ウクライナの主権に対する露骨な攻撃であると同時に、この地域の安全と安定、そしてルールに基づく国際秩序に対する深刻な脅威だ。本日発表した制裁と追加の軍事支援は、ロシアの不当な侵略を阻止するためにカナダが取る最初の一歩だ」と発言した。また、メラニー・ジョリー外相は「われわれは、さらに多くのロシアの金融部門と新興財閥(オリガルヒ)を対象にして、カナダの対ロ輸出に関する重要な発表を行う用意がある」と述べた。
今回の発表を受け、カナダの大手法律事務所マッカーシー・テトローで国際貿易・投資法専門のジョン・ボスカリオール弁護士は「350人以上ものロシア連邦議会議員を対象とした制裁は前例がないだろう。カナダとロシアの間の貿易や投資額を考慮すれば、これはカナダ史上最も重要な制裁措置の始まりだ」とコメントした(「グローブ・アンド・メール」紙2月22日)。カナダ統計局によれば、カナダの2021年のロシアへの輸出額は約6億5,600万カナダドル(約597億円、Cドル、1Cドル=約91円)、輸入額は21億4,000万Cドルで、産業機械や輸送機器が主要な輸出品となっている。ボスカリオール氏は、ジョリー外相の警告から、カナダの次の制裁が輸出管理になるのではないかと予測している。
(注)親ロシア派勢力が支配する「ドネツク人民共和国」「ルガンスク人民共和国」を指す。
(飯田洋子)
(カナダ、ロシア、ウクライナ)
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