バイエルン州、燃料電池トラック研究開発に820万ユーロを助成

(ドイツ)

ミュンヘン発

2022年02月25日

ドイツ・バイエルン州の経済・開発・エネルギー省は2月17日、フォルクスワーゲン(VW)の商用車部門トレイトンに属するMANトラック&バスの「バイエルン車両水素プロジェクト」の研究開発に対し、総額820万ユーロを助成することを発表した(同省プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

MANは本助成を受け、2024年半ばまでに5つの燃料電池トラックのプロトタイプを開発する。開発には、ドイツ自動車部品大手のボッシュ、ZFおよびフランスの自動車部品メーカーのフォルシアも参加する。完成したプロトタイプはエネルギー関連企業のバイワ(BayWa)、物流会社DBシェンカーを含む5社に提供され、通常のビジネス環境の中で1年間、走行実証を行う。

ニュルンベルクで開催された助成金授与式には、マルクス・ズーダー・バイエルン州首相、フーベルト・アイバンガー経済・開発・エネルギー相らが出席した。今回の助成は、同省が2020年5月に発表した「バイエルン水素戦略」の一環(2020年6月5日記事参照)。バイエルン州は「バイエルン水素戦略」に基づき、州内の商用車両向け水素充填(じゅうてん)ステーション整備に対する助成など(2020年10月7日記事参照)、水素ビジネス環境の整備を進めている。

主眼はあくまでも電動トラック

MANが属するトレイトンは、商用トラックの将来の動力源の中心は電動になるとみている(2021年5月17日記事参照)。MANは2024年初頭から、年産200台の大型電動トラックをミュンヘン工場で製造する予定。アレクサンダー・ブラスカンプMAN社長は「2020年代半ばより少し前に、多くの欧州諸国における大型電動トラックとディーゼルトラックのオペレーションコストは同等レベルになるだろう」とコメントしている。同社はあくまでも電動トラックの補完として、一部の用途で燃料電池トラックが導入されるとみており、そのために今回の助成を受けて同事業の研究開発を進めるとしている。

MANは一方で、大型電動トラックが普及するためには充電インフラの整備が必要としている。トレイトンは2021年12月、ダイムラー・トラック、スウェーデンのボルボ・グループと、欧州で電動トラック・バス向け充電インフラを整備する会社を設立すると発表した(2021年12月24日記事参照)。MANは、充電インフラが整備されれば、同社が2030年に販売する長距離用トラックの半数が電動トラックになり得るとしている。欧州自動車工業会(ACEA)によると、2020年にEUで運行した中・大型トラックの96.3%はディーゼル車で、電動トラックは0.24%にすぎなかった。

(クラウディア・フェンデル、高塚一)

(ドイツ)

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