連邦政府、労働市場現代化に向けた政策に合意、オフラインの権利尊重の義務化も

(ベルギー)

ブリュッセル発

2022年02月18日

ベルギー連邦政府は2月15日、労働市場を現代化する政策パッケージに合意したと発表(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。より自由で柔軟性の高い労働市場を目指し、(1)人材への投資の加速、(2)デジタル経済への適応、(3)ワーク・ライフ・バランスの改善、(4)就業率の向上の4点について、以下の具体的な政策を掲げた。

  1. 人材への投資の加速:2022年から段階的に年に3~5日の職業訓練を受ける権利を全ての労働者に付与する。企業に対しては、社員の能力向上に資する研修計画を少なくとも年に1回策定する義務を課す。
  2. デジタル経済への適応:プラットフォームビジネス(注1)に従事する労働者の社会的地位を明確にし、労災補償を含めた労働条件の改善に向け、関連法令を改正する。
  3. ワーク・ライフ・バランスの改善:労働者が希望する場合、週4日勤務や変形労働時間制(注2)の選択を可能とする。従業員が20人以上の企業については、就労時間外にメールや電話などに応答しない労働者の権利(オフラインの権利)を尊重する義務を課す。そのほか、勤務シフトが固定されていないパートタイム労働者への勤務スケジュールの通知期限について、現在の5営業日前から、最低でも7営業日前とする(ただし、労働協約で別に定めがある場合はそれが優先される)。
  4. 就業率向上のための政策:電子商取引(EC)関連企業に対し、午後8時~午前0時の従業員の勤務を許可する。実証実験として就業規則に変更を加えずに実施が可能で、最長1年半の時限的なものとする。2年後に労働審議会で同政策について評価を行う。また、企業にダイバーシティーに関する報告書の作成を義務付け、特別な理由がなく業界の平均的なダイバーシティーの度合いと乖離している場合、企業は是正に向けた行動計画を策定する必要がある。加えて、労働市場の流動性を高めるため、解雇通告期間中でも再就職活動や就労を開始することを認める。

今回の労働制度改革案は、閣議の第一読会で承認されており、今後は関連団体から意見を募り、修正が加えられた後に第二読会で審議され、法制化される。連邦政府は、2020年の連立政権発足時に、国の財政基盤となる雇用創出を優先課題の1つとして挙げ(2020年10月6日記事参照)、2030年までに就業率80%達成を目指している。ピエール・イブ・デルマニュ副首相兼経済・労働相は、政権発足以降、就業率は1.5ポイント改善しているとした。EU統計局(ユーロスタット)の直近のデータによると、2021年第3四半期(7~9月)のベルギーの就業率は71.4%だった。

(注1)サービスを供給するサプライヤーがユーザーに対してサービスの基盤(プラットフォーム)のみを提供するビジネスのこと。代表的なものに配車サービスなどが挙げられる。

(注2)一定の期間を平均して、1週間当たり労働時間が法定労働時間(ベルギーでは週38時間)を超えない範囲で各日または各週の労働時間を定めるもの。

(大中登紀子)

(ベルギー)

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