連立政権の優先課題は医療、雇用、環境
(ベルギー)
ブリュッセル発
2020年10月06日
ベルギーで10月1日に新たに発足した7政党からなる連立政権(2020年10月6日記事参照)は組閣を前にした9月30日、政策方針に関する報告書を公表した。新型コロナウイルス感染拡大により、他国と同様にベルギーも深刻な影響を受けたとして、経済と社会の立て直しが急務という認識の下、以下の6点を連立政権の政治的優先課題とした。
- 新型コロナウイルス危機の対応を最優先事項とし、最も重要な財産である国民の健康を保護するため、医療分野、特にメンタルヘルス分野への投資を行う。また、年金の最低保証額の引き上げや、男女平等の観点から出産休暇の取得可能日数を見直すなど、社会保障や年金制度の改革を行う。
- 国の財政基盤となる雇用創出も優先課題として、2030年までに就業率80%達成を目指す。47億ユーロを「経済復興と企業の投資促進計画」に充て、経済を立て直し、雇用を創出し、低炭素経済への移行を実現させる。
- 持続可能で環境配慮型の社会への転換を目指し、温室効果ガス排出量を2030年までに55%削減、2050年までに気候中立達成を目標とする。目標達成のため、風力、太陽光などの再生可能エネルギーへの転換を促進する。
- 国民と企業が信頼でき、確実に機能する治安サービスとより迅速で効率的な司法制度の実現のため、デジタル化の推進を含む大規模な投資を行う。また、迅速な司法手続きと判決の効率的な実行に向けた整備を行い、かつ、警察と地方自治体の権限を強化する。
- 連邦制の下の各政府の管轄する政策分野〔注〕がより調和し、権限がより効果的に分配される仕組みとするための構造改革の準備を行う。
- ベルギーは親EUであるとともに、国際舞台でも多国間協力を支持し、特に、国連の持続可能な開発計画や2030アジェンダを支持する。さらには、ベルギーが2024年上半期にEU議長国を務めることを見据えて、欧州におけるベルギーのプレゼンスを強化する。
〔注〕ベルギーは連邦制を採用しており、連邦政府と地域政府、言語共同体政府が異なる政策分野を管轄している。連邦政府は外交や国防、財政、司法、医療について全土を管轄している。地域政府のフランダース政府、ブリュッセル首都圏地域、ワロン地域政府はそれぞれの地域で雇用や経済、通商、農業、環境などを管轄している。言語共同体政府は公用語に応じてフランス語共同体政府、フラマン語(オランダ語)共同体政府、ドイツ語共同体政府があり、教育や文化などを管轄している。
(大中登紀子)
(ベルギー)
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