OECD加盟へ一歩前進、ビジネス環境改善への追い風に

(ブラジル)

サンパウロ発

2022年02月01日

OECD理事会は1月25日、ブラジル含む6カ国のOECD加盟に向け、協議を開始したことを発表した。ブラジル政府は、2017年5月に加盟申請を行っていた。

この度の動きを受け、全国工業連盟(CNI)のホブソン・アンドラーデ会長は、2022年1月25日付公式サイトで「ブラジル産業界にとって極めて重要な一歩。OECDへの加盟協議が開始されたことで、ブラジルにおいて重要な諸改革が進むと確信している。ブラジルにおける産業競争力強化や持続可能な成長へとつながるだろう」と述べている。

1月28日付の経済省公式ウェブサイトによれば、ブラジルは、OECDの枠組みで国際基準などを定めた法的文書251(現在有効なもの)のうち104を満たしており、今回同時に協議を開始するアルゼンチンやペルーなどの他国より進んだ段階にある、と説明した(注1)。

ブラジルは加盟候補国となった今回のタイミングで、OECD加盟国政府の義務的な国際基準とされる「資本移動自由化規約」を満たすべく国内で準備を進めている。経済省は1月28日、公式サイトで金融取引に対して課税する金融取引税(IOF)を2029年までに段階的にゼロにする方針を打ち出した(注2)。例えば、現在は外国からの借入期間が180日以下であればIOFが6%となっているところ、これを2022年中に「ゼロ・パーセント」にする予定だという。また、経済省のエリバルド・ゴメス国際経済問題担当次官は1月25日付の現地紙「エスタード」のインタビューにおいて、ブラジル国内で発行されたクレジットカードおよびデビットカードを海外で使用する際の課税率が現状6.38%となっているものを、またブラジル国内で外貨を現金で購入する際の課税率が1.1%となっているものを、いずれも2028年中に「ゼロ・パーセント」にすることも想定している、と述べている。

その他にも、2021年9月には近隣諸国との海上輸送を自由化するなど(2021年9月17日記事参照)、OECDの理念の1つである「国際的義務に従って、世界貿易の多角的かつ無差別的な拡大に貢献すること」を意識した動きもあった。

ただ、OECDの枠組みにおける国際基準などのカテゴリーを「環境分野(全71)」でみた場合、ブラジルは7つを満たしているにとどまる。経済省は、環境分野を課題の1つと認識し、さらなる規制改革などに意欲をみせている。OECD加盟という目標に向け、現政権が取り組んでいるビジネス環境改善が加速する可能性がある。

(注1)OECD公式サイトによれば、規制標準251のうち、ルーマニアは54、アルゼンチンは51、ペルーは45、ブルガリアは32、クロアチアは28を満たしている(1月28日時点)。

(注2)IOFは、金融取引に対して課税される連邦税で、税率は金融取引の種類により異なり頻繁に変更される。

(古木勇生)

(ブラジル)

ビジネス短信 3b968e662cab5b03