モスクワ郊外に新型の廃棄物処理施設が稼働、積年のごみ問題改善へ
(ロシア)
欧州ロシアCIS課
2022年02月04日
ロシアで廃棄物改革を推進する目的で設立された国営企業「ロシア環境オペレーター」(REO)は1月26日、モスクワ郊外のソルネチノゴルスクに新型の廃棄物処理施設「ネワ」が稼働開始したと発表した。連邦政府は天然資源・環境省が2018年9月に作成した国家事業の環境(エコロジー)の取り組みとして、都市ごみ問題の解決を目指している。
ネワは2021年1月に建設が開始され、国際基準を満たした年間50万トンの廃棄物処理能力を有し、施設の自動化率も国内で最高の水準。設備の78%はロシア製で、開発や製造、試運転は環境プラント事業大手のロシア企業が担当した。
モスクワ州のエフゲニー・フロムシン副知事は「施設に送られてくる廃棄物の最大75%がリサイクルされる。これはロシア国内の処理施設で最も高い処理率で、ごみの埋め立て問題が改善される」と語った。また、ネワの広報ウェブサイトは、年間50万トンの廃棄物からリサイクルした材料が収益を生むと説明している(添付資料表参照)。
ロシアでは、ソ連時代からの課題だったごみ処理問題が近年さらに顕在化している(2019年1月22日付地域・分析レポート参照)。このため、2019年から政府の主導で「廃棄物改革」が本格化し、自治体は家庭ごみなどの固形状の都市廃棄物の処理、処分のための設備構築に取り組んでいる。REOによると、ロシアでは毎年約6,000万トンの固形状都市廃棄物が排出されており、ほとんどが適切に処理されずに埋め立て地に送られ、悪臭や土壌汚染を発生させている。政府は2030年までに埋め立て地に送る量をリサイクルや焼却によって50%まで減らす目標を掲げており、ネワを含めて国内3地域5カ所のプロジェクトに合計61億6,700万ルーブル(約92億5,050万円、1ルーブル=約1.5円)の貸付による支援を行っている。プーチン大統領は取り組みが順調に進んでいると記者会見で評価した(REO 2021年12月13日)。
各地域の取り組み事例としては、モスクワ市が2020年1月から開始した分別収集がある。同年には100万トン(前年比18%増)以上のリサイクル可能なごみ収集され、モスクワ市のピョートル・ビリュコフ副市長は実施された戦略の有効性が証明されたと述べた(「ロシア新聞」2022年1月26日)。同年末には64の自治体が連邦政府の補助金を利用して分別用の廃棄物収集用コンテナを合計6万個以上購入し、各連邦構成体でも廃棄物の分別が始まっている(REO、2022年1月25日)。
(小野塚信)
(ロシア)
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