2021年の経済成長率は5.6%、2022年の高中所得国入りを見込む

(フィリピン)

マニラ発

2022年02月04日

フィリピン統計庁(PSA)は1月27日、2021年の実質GDP成長率を5.6%と発表した(添付資料表参照)。政府が事前に予想していた5~5.5%を上回った(2021年12月23日記事参照)。同年第4四半期(10~12月)は前年同期比7.7%の成長率だった。

フィリピンでは、新型コロナウイルス感染拡大や、感染を防ぐために導入した厳格な移動・経済制限措置で、2020年の実質GDP成長率はマイナス9.6%だった。これに対して、2021年から感染リスクが高いエリアに絞って経済活動などを制限する対策へ移行していた。国家経済開発庁(NEDA)は、このリスク対策が2021年の安定的な経済成長につながったとみている。

2021年通年の成長率について需要項目別にみると、大きなシェアを占める民間最終消費支出は4.2%(2020年はマイナス7.9%)とプラス成長に転じた。国内総固定資本形成の成長率は19.0%(同マイナス34.4%)で、特に改善がみられた。

産業別では、鉱工業が8.2%、サービス業が5.3%とプラス成長だが、農林水産業はマイナス0.3%だった。鉱工業のうち、建設業は9.8%(2020年はマイナス25.7%)と大きな成長を見せた。サービス業では、医療福祉が15.0%(同マイナス3.8%)、情報通信が9.1%(同5.0%)、教育が8.0%(同マイナス10.8%)だった。特に情報通信は2020年と2021年を通じて高い成長率を維持している。新型コロナ禍を経て、デジタル関連分野の産業の成長が著しい状況にある(2021年11月2日記事参照)。

NEDAは、農林水産業が2021年にマイナス成長だった理由として、アフリカ豚熱(ASF)や超大型の台風が同産業の生産面にダメージと与えたと分析している。

NEDAは2021年の経済成長率について「フィリピン経済が適切な経済回復の経路をたどっている」との認識を示した。その上で、2022年内に経済水準が新型コロナ禍前に戻るとともに、高中所得国(注)になる見込みと発表した。政府は2022年の経済成長率を7~9%と予測している。

(注)世界銀行の定義では、1人当たり国民総所得(GNI)が4,046~1万2,535ドルに該当する。

(吉田暁彦、サントス・ガブリエル)

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