ブレグジット調整準備金交付プログラムの第2弾を発表

(ハンガリー)

ブダペスト発

2022年01月17日

ハンガリーのシーヤールトー・ペーテル外務貿易相は1月4日、自身のSNSで、英国のEU離脱(ブレグジット)で損失を受けた企業が利用できる調整準備金(BAR、2021年1月15日記事参照)交付プログラムの第2弾を実施することを発表した。プログラムの第1弾は、2021年9月に発表されたが(2021年9月24日記事参照)、その際には37社が合計102億フォリント(約37億7,400万円、1フォリント=約0.37円)の助成金を受け、これまでに食品、機械、通信産業などの分野で合計190億フォリント投資されている。

外務貿易省は、第1弾の成功を踏まえ、今回は合計120億フォリントの予算枠を設定、上限20億フォリント(最低額は300万フォリント)で損失立証額の支援申請の受け付けを開始した。申請では立地地域や業種に制限はなく、ブレグジットにより損失を被った全ての企業が対象となる。 補助割合については、零細・小企業が70%、中堅企業が60%、大企業が50%となっている。申請にかかる条件などについては1月12日に発表された。

申請期間は1月17日から2月20日までで、資金は技術革新につながる新設備の購入、インフラや不動産の開発、EU域外でのマーケティング活動、情報技術開発、エネルギー消費削減のための開発、サイバーセキュリティーやデータ保護などに利用できる。 シーヤールトー外務貿易相は声明で「ブレグジットによる輸出の損失を相殺するために、BARの全資源ができるだけ早く経済に注入されるようにしたい」と述べた。

2021年9月に行った第1弾では、EUの正式な決定を待たずに、先行してハンガリーの国家予算が確保されたが(注)、その後、10月にEUがBARの設置規則を施行したため、今回は国費を確保する必要はない。前回、EU決定を待たずに先行実施した理由について、外務貿易相は「世界経済の回復に対応するために待つ時間はない。ハンガリー企業が資本力をつけて、新しい経済競争のために最善のスタートを切ることがわれわれの利益となる」としていた。

BARの分配を担当するハンガリー貿易公社(HEPA)のサボー・クリシュトーフ最高経営責任者(CEO)は、ブレグジットによる市場の再編成は新たなチャンスとも捉えられると語る。同氏は経済ニュースポータルnovekedes.huとのインタビューで「かつての輸出企業は新たな競争相手に直面している。これは適応しなければならない変化であり、一時的な損失は後の利点につながる。このことを助成金活用をきっかけに意識し、利用できる機会にすべきだ」(12月14日)と述べている。

(注)ブレグジット調整準備金(BAR)の設置を定めたEU規則2021/1755は、2021年9月28日にEU理事会(閣僚理事会)で採択され、同年10月9日から施行された。

(バラジ・ラウラ)

(ハンガリー)

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