2022年のGDP成長率予測は5.4%、電力価格高騰が大きな押し下げ要因に

(スペイン)

マドリード発

2022年01月12日

スペイン中央銀行は12月17日に発表したマクロ経済予測で、2022年の実質GDP成長率を5.4%とし、前回9月の予測から0.4ポイント下方修正外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした(添付資料表参照、2021年12月28日記事参照)。成長の牽引役となるのは個人消費と企業投資、輸出で、民間最終消費支出は5.1%増、国内総固定資本形成は7.8%増、財・サービス輸出も9.1%増と内外需ともに回復に向けて大きく弾みをつけるとみている。

インフレは2022年後半に沈静化へ

2021年半ばから回復失速をもたらしているインフレは2022年中も続き、インフレ率は前年比0.7ポイント増の3.7%に達するとしている。インフレ高進の2大要因であるサプライチェーンの混乱は年中ごろ、電力卸価格の高騰は春ごろにピークアウトし、いずれも年内には沈静化し、2023年のインフレ率は1.2%まで低下するとの見通しだ。

とはいえ、2022年のGDP成長率にインフレがもたらす影響は依然大きい。中銀によると、電力価格高騰はGDPを1ポイント、サプライチェーン混乱は0.7ポイント押し下げるとしている。また、サプライチェーン混乱の影響の7割方は自動車産業への影響という。

他方、成長率の押し上げ要因として期待されるのはEU復興基金だ。同基金は当初予測よりも執行が遅れているが、2022~2023年に関連プロジェクト実施が本格化し、2022年のGDP押し上げ効果はそれぞれ1.6ポイントとなる見込み。また、インバウンド観光は新たな新型コロナウイルス感染拡大のリスクを考慮した慎重な予測ながら、夏には2019年の水準の8割まで回復するとみている。2023年のGDP成長率については3.9%と、前回予測から1.9ポイント上方修正した。新型コロナ禍からの回復は2022年後半から2023年にかけて加速が見込まれる。

成長の下振れリスクとしては、地政学的緊張の高まりによる欧州のガス価格高騰といったインフレ長期化要因を挙げているほか、EU復興基金の実施ペースやマクロ経済にもたらす効果についても不確実性が残るとした。

国際機関もスペイン経済の回復遅れを考慮し、相次いで見通しを下方修正している。欧州委員会は2022年の成長率を5.5%(2021年11月15日記事参照)、IMFは5.8%(12月)と予測している。

(伊藤裕規子)

(スペイン)

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