米商工会議所、バイデン政権に貿易協定締結による競争力向上を訴え

(米国、中国)

米州課

2022年01月12日

米国商工会議所は1月11日、産業界や経済政策の優先課題などについて議論する年次イベント「State of American Business 2022」を開催外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。2022年は「競争」に焦点を当て、米国商工会議所の幹部のほか、米国企業の経営者や連邦議会議員が講演やディスカッションを行った。

米国商工会議所のスーザン・クラーク会頭兼最高経営責任者(CEO)は基調講演で、「競争こそが米国をつくり上げるものだ」と述べ、市場、人材、世界でのリーダーシップ、アイデアに関わる競争の重要性を強調した。そのうち、世界でのリーダーシップに関しては、通商分野での米国の出遅れを指摘。他国が競うように新しい貿易協定締結に動く一方、バイデン政権が英国をはじめとする同盟国などとの貿易協定の締結に積極的に動いていないことに懸念を示した。特に、中国も加盟する「地域的な包括的経済連携(RCEP)協定」の発効(2022年1月6日記事参照)や、同国とアフリカ・ラテンアメリカ諸国との貿易・投資関係の拡大に触れ、他国との貿易協定締結に取り組まなければ、輸出市場や輸出が支える国内雇用を失いかねないと訴えた。米国の産業界や議会からはバイデン政権に対し、他国との通商関係の強化を促す声が強まっており、米国商工会議を含む複数の業界団体も、バイデン政権にインド太平洋地域でのデジタル貿易締結を求める書簡を送っている(2021年12月1日記事参照)。

中国への対応に関しては、「簡単な答えはない」としつつ、米国の価値や安全保障のために立ち上がり、不公正な貿易・規制慣行に対抗しなければならないと指摘した。他方で、持続可能性や公衆衛生などの国際的な重要課題では協力する必要があるとした。

連邦議会では、中国との長期的な競争を念頭に置いた「米国イノベーション・競争法案(USICA、S.1260)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」が審議されている。米国商工会議所のニール・ブラッドリー副会頭兼最高政策責任者はイベントに伴う記者会見で、USICAへの支持を表明し、同法案に含まれている一般特恵関税制度(GSP)および諸関税法(MTB)の更新も求めた(通商専門誌「インサイドUSトレード」1月11日)。特定の輸入関税を削減・撤廃するGSPとMTBは、ともに2020年末に失効している(2020年12月25日記事参照)。米国商工会議所は、2022年の国際通商・投資・規制分野の政策の優先課題外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの中でも、GSPおよびMTBの更新を挙げている。

(甲斐野裕之)

(米国、中国)

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