欧州の2021年の空港利用者数は前年比37%増も、新型コロナ前の半数以下

(EU、EFTA)

ブリュッセル発

2022年01月31日

国際空港評議会(ACI)の欧州地域総会は1月25日、2021年の欧州地域(注)の空港利用者(旅客)数は前年比で37%増だったものの、新型コロナウイルス危機前(2019年)と比較すると59%減(約14億人減)だったと発表した(プレスリリースPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))。新型コロナのデルタ株が流行し、各国が規制を強化した2021年上半期は2019年同期比で77.7%減だったが、ワクチン接種が進んだことと、6月のEUデジタルCOVID証明書の導入、11月の北米路線の再開が追い風となり、下半期は同42.4%減まで持ち直した。しかし、新たなオミクロン株の流行が始まった12月、再び旅客数は低迷し始めているという。ACIは、第1四半期(1~3月)は例年、需要が低いシーズンでもあり、2022年第1四半期は厳しいが、春に向けて需要回復に期待するとした。

2021年の航空需要の回復状況は、欧州内でも地域や空港規模によって差があった。EU加盟国と、アイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェー、英国、スイス(以下、発表内容に即して「EUプラス諸国」)の年間旅客総数は前年比29.2%増だったが、2019年比では64.6%減と大きく落ち込んだ。一方、EUプラス諸国以外の欧州諸国では前年比59.4%増、2019年比で34.4%減だった。2021年に欧州地域で最も旅客数が多かった空港はトルコのイスタンブール空港で、ロシアのモスクワ・シェレメチェボ空港が続いた。EUプラス諸国の中でも落ち込みが大きかったのは、フィンランド(2019年比80.5%減)、英国(78.1%減)、チェコ(74.8%減)などで、ACIは、総じて新型コロナウイルス関連の渡航規制が厳しかった国ほど影響が大きかったと分析した。また、年間旅客数が500万人以下の地方の小規模空港の方が、2,000万人以上の大規模空港よりも需要回復のスピードが速かったとした。ACIは、新型コロナウイルス関連の規制のため、多くの国際路線が実質的に停止状態となっており、欧州域内の移動や国内旅行が航空需要の回復を大きく支えたことを反映しているとした。このほか、旅客便とは対照的に、貨物便は前年比21.8%増、2019年比でも7.7%増と好調だった。

EU加盟国にEUレベルの協調対応を再度求める

EU理事会は1月25日、有効なEUデジタルCOVID証明書の保持者の移動は原則として制限なしとする新たな勧告を採択した(2022年1月26日記事参照)が、法的拘束力はなく、勧告の扱いについてはEU加盟国の判断に委ねられている。ACIは欧州の航空・旅行関連7団体とともに同日、加盟国に欧州レベルで協調した対応を取るようにあらためて求める声明を発表した(プレスリリースPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))。8団体は各国がワクチン接種の有効期間などで異なった対応を取るため、個人客やビジネス客の旅行計画を立てづらく、今後、予約率は2021年比で少なくとも30%減となると予測。1年の中でも最も需要が高まる夏季休暇シーズンや、2020年以降に苦境に陥っている同部門の経済回復へ向けて、明確で安全な一貫したルールを示すため、各国政府間での調整がより一層求められていると述べた。

(注)EU加盟国と、アイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェー、英国、スイス、アルバニア、アルメニア、ベラルーシ、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ジョージア、イスラエル、コソボ、北マケドニア、モルドバ、モンテネグロ、ロシア、セルビア、トルコ、ウクライナ、ウズベキスタンの計47カ国。

(滝澤祥子)

(EU、EFTA)

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