欧州委、EUタクソノミーに原子力や天然ガスを含める方針を発表

(EU)

欧州ロシアCIS課

2022年01月04日

欧州委員会は1月1日、持続可能な経済活動を分類する制度である「EUタクソノミー」に合致する企業活動を示す補完的な委任規則について、原子力や天然ガスを含める方向で検討を開始したと発表した(同プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。EUタクソノミーは、EUが掲げる2050年までの気候中立の達成に実質的に貢献する事業や経済活動の基準を明確化することで、「グリーン」な投資を促進することを目指すもの。

欧州委は、現在、各加盟国の電源構成は異なっており、石炭などへの依存度がまだ高い国もあることを認識し、再生可能エネルギーを中心とした未来のエネルギーへの移行を促進する手段として、原子力や天然ガスも一定の役割があるとの見解を示した。そのため、これらのエネルギー源に関して明確な基準と条件を定め、再生可能エネルギーの移行に貢献する持続可能な経済活動として位置付ける。

タクソノミーにおける原子力や天然ガスの扱いについては、加盟国によって意見が分かれている。複数の現地報道によれば、原子力への依存度が高いフランス、フィンランド、チェコなどは、二酸化炭素を多く排出する石炭エネルギーからの移行を果たすために原子力は欠かせないとする一方、原発廃止を掲げるドイツ、オーストリア、ルクセンブルクなどは、タクソノミーに両エネルギーを含めることに反対している。

EUタクソノミー規則は2020年7月に施行され、持続可能な経済活動の目的として、(1)気候変動の緩和、(2)気候変動への適応、(3)水・海洋資源の持続可能な利用と保護、(4)循環型経済への移行、(5)汚染の予防と管理、(6)生物多様性とエコシステムの保護・再生の6類型を規定している(2020年6月30日記事参照)。それぞれの目的に沿った経済活動を明示した詳細なリスト(グリーン・リスト)を委任規則によって定めており、2021年4月に第1弾として、気候変動の緩和と気候変動への適応をカバーする委任規則を公表(2021年4月22日記事参照)し、1月1日から適用が開始されている。

欧州委は今回、原子力や天然ガス関連の活動を含めた委任規則のテキスト案について、1月12日までサステナブル・ファイナンスに関する加盟国の専門家グループとサステナブル・ファイナンス・プラットフォーム(注)による諮問を実施し、その結果を踏まえ、1月中に正式に委任規則を採択する予定。その後、同委任規則は欧州議会とEU理事会(閣僚理事会)によって審査され、適用開始されることになる。

(注)環境、サステナブル・ファイナンスに関する知見を有する民間企業や団体、シンクタンク、EU諸機関などが参加する諮問機関。

(土屋朋美)

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