韓国エンケム、ポーランドでEV用バッテリー向けリチウム塩を製造へ

(ポーランド、韓国)

ワルシャワ発

2022年01月27日

ポーランドの産業開発庁は1月19日、ポーランド南東部のタルノブジェグ経済特区ユーロパーク・ウイズロサンにおける100件目の事業経営支援の決定書を発行し、電解液製造を手掛ける韓国のエンケムがドルノシロンスク県コビエジツェに、リチウム塩製造のための新工場と設備を建設すると発表した。投資額は2億4,000万ズロチ(約67億2,000万円、1ズロチ=約28円)。2018年にポーランド投資ゾーン(Polish Investment Zone:PIZ)が開設されて以来、タルノブジェグ経済特区では、韓国企業による3番目に大きな投資となる。

エンケムは、電気自動車(EV)用バッテリーを製造するLGエナジーソリューション(韓国)のサプライヤーで、既にコビエジツェで電解質の製造を行っている。今回の発表によると、既存工場を拡大し電解質の生産能力を約4倍に上げること、そして、新規投資の一環としてリチウム塩の生産プラントと設備を建設するとされている。リチウム塩はEV用バッテリーの製造だけでなく、電池用の電解質の製造にも使用される主要な成分の1つで、今回の投資により、同社が欧州で唯一のリチウム塩の生産者になる見込みだ。

EU統計局(ユーロスタット)によると、2020年のポーランドのリチウムイオンバッテリーの輸出額は、EU27カ国の中ではEU域内向けで1位、EU域外向けで3位となっている。LG エナジーソリューションのほか、ユミコア(ベルギー)、SKアイイーテクノロジー(韓国、2021年4月12日記事参照)、ノースボルト(スウェーデン、2018年11月6日記事参照)、ジョンソン・マッセイ(英国)、新宙邦科技(中国)などが生産を行っており、関連する投資が相次いでいる。2021年の初めには、LGエナジーソリューションがコビエジツェの工場の拡張(投資額:約31億ユーロ)を、ノースボルトも北部ポモージェ県グダンスクでの研究開発センターの設立(約2億ドル)を発表した。同年11月には、韓国SKグループのSKネクシリスが、EV用バッテリーの製造に使用される銅箔(どうはく)の工場を南東部ポトカルパチェ県スタロバボラに建設することを発表している(約30億ズロチ)。

また、報道によると、2021年12月には中国のEV用バッテリーの最大手である寧徳時代新能源科技(CATL)が、ドイツへの供給を目的とする新工場建設(投資額:約20億ユーロ)の候補地として、ポーランド西部のドルノシロンスク県ヤボルやルブシュ県ゴジュフビエルコポルスキなどを視察したと伝えられている。

(今西遼香、ニーナ・ルッベ)

(ポーランド、韓国)

ビジネス短信 8d4c0cc16a1edd79