2021年の実質GDP成長率は8.1%、四半期別では伸び鈍化

(中国)

北京発

2022年01月19日

中国国家統計局の1月17日の発表によると、2021年の実質GDP成長率は前年比8.1%となった(注1)。四半期別では、2021年第4四半期(10~12月)の成長率は4.0%となり、第3四半期(4.9%)よりも伸びが鈍化した(添付資料図参照)。

主要経済指標をみると、実質GDP成長率のほか、物価・雇用の指標で、2021年3月の全国人民代表大会での政府活動報告で設定していた目標を達成した(注2)。他方、2021年の投資・消費・工業生産の伸び率は2020年の水準を上回っているものの、2年平均でみると、工業生産を除く投資・消費の伸び率は2019年の水準には達していない(添付資料表参照)。また、実質可処分所得の前年比伸び率は8.1%、2年平均では5.1%と、いずれも実質GDP成長率と同じだったが、2年平均の伸びは2019年の実質可処分所得の水準を0.7ポイント下回っている(注2)。

国家統計局の寧吉喆局長(国家発展改革委員会副主任を兼任)は、2021年は「穏中求進」(安定の中で前進を求める)という全体の基調を堅持し、第14次5カ年規画(2021~2025年)の初年として幸先のよいスタートを切ったと評価した上で、2022年は中国経済が徐々に平常に回帰する年であり、外部環境は複雑かつ不確実で挑戦も多いものの、経済を合理的な区間(レンジ)に保つ要素に変化はなく、引き続き安定の中で前進するという基調を維持できる見込みとした。投資については、インフラ投資の適度な前倒しに注力しているとして、2021年下半期以降、専項債(地方政府が発行する特別債)の発行を加速していること、14・5規画で定めた102の重点プロジェクトが続々と始まっていることなどを紹介した。

国務院発展研究センターの張立群マクロ経済研究員は、2022年に安定的な成長を遂げるには、サプライチェーンや産業チェーンを円滑に保ちつつ、より積極的な財政・金融政策によって政府主導の投資を増やすことで需要不足の問題を解決すべきと指摘した(注3)。また、粤開証券研究院の羅志恒首席マクロ研究員は、繰り返し発生する新型コロナウイルスの感染拡大によって市民が予備的貯蓄を増やし、平均消費性向(可処分所得に占める消費支出の割合)が低下していることが消費の持続的な低迷につながっているとの認識を示した。その上で、新たな一連の消費促進策が効果を発揮し、かつ共同富裕に関する政策が実施されることで、貯蓄が消費に回るようになると期待を示している(「21世紀経済報道」2022年1月17日)。

(注1)需要項目別寄与度は、最終消費支出(消費)5.3ポイント、純輸出(外需)1.7ポイント、総固定資本形成(投資)1.1ポイントとなった。2021年第4四半期(10~12月)の実質GDP成長率に対する需要項目別寄与度は、最終消費支出(消費)3.4ポイント、純輸出(外需)1.0ポイント、総固定資本形成(投資)マイナス0.5ポイントだった。

(注2)2年平均伸び率とは、国家統計局の定義によると、2019年の同期を比較対象として幾何平均の方法で算出した伸び率としている。

(注3)金融政策に関しては、中国人民銀行(中央銀行)が2021年12月以降、預金準備率の引き下げ、ローンプライムレートの引き下げ、MLF金利の引き下げを相次いで実施している(2021年12月21日記事参照)。

(小宮昇平)

(中国)

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