バイデン米政権、気候変動閣僚会議を開催、2030年目標の実施・強化を訴え

(米国)

ニューヨーク発

2022年01月31日

米国のバイデン政権は1月27日、閣僚レベルで気候・エネルギー主要国経済フォーラム(MEF)を開催外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。MEFはオバマ政権時に創設された枠組みで、2021年9月に開催されたMEFでは複数国が2030年のメタンガス30%削減について合意している(2021年9月21日記事参照)。米国との対立が激化する中国やロシアをはじめ、EUやインド、日本など、世界の温室効果ガス(GHG)排出量の80%を占める20以上の国・地域から関係閣僚が参加した。

会議では、2021年11月の国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)の成果を踏まえ、気温の上昇を産業革命以前と比べて1.5度に抑えるというパリ協定の目標を達成するため、各国の2030年目標の着実な実施とさらなる追加目標の可能性、および国内外の課題が話し合われた。議長を務めたジョン・ケリー気候問題担当大統領特使は、カーボンネットゼロを達成するためには何兆ドルもの投資が必要なことや、石炭の段階的廃止を加速する必要があることを各国に訴えた。ケリー特使は、会議に先立って受けたテレビインタビューの中で、「国際エネルギー機関が石炭火力発電を870ギガワット(GW)削減しなければならないと述べているのにもかかわらず、約300GWの新しい石炭火力発電建設が進められている」と指摘した(ブルームバーグ1月26日)。これには、電力不足を背景に石炭火力発電を推進する中国が念頭にあるとみられるが、これに関連して、中国の習近平国家主席は最近、国民の日常生活を確保するために、食料やエネルギーなどの安全保障を犠牲にしてまで排出削減は行わないことを示唆したとされる(「ニューヨーク・タイムズ」紙電子版1月27日)。

また、会議では、2030年までに新規の電力開発をゼロカーボン電源とすることや2030年のライトビークル(乗用車、小型トラック)全体に占めるゼロエミッション車の割合など、国家横断的な目標設定についても検討された。

各国に排出削減努力を促す米国だが、自らの足元はおぼつかない。パンデミックからの回復の反動とはいえ、2021年のGHG排出量は前年比6.2%増加し、GHG排出削減の切り札だったビルド・バック・ベター法案の成立も見通せていない(2022年1月17日記事参照)。最近では、メキシコ湾の石油リース権の入札結果に対し、気候変動への影響を厳密に分析していないとして、連邦地方裁判所が内務省に対し、リース販売を無効とする判断が下されている(ブルームバーグ1月27日)。

他方、前進する動きもある。最近になって、連邦および州政府において洋上風力発電事業の開発が活発なことに加え(2021年12月27日記事参照、2022年1月17日記事参照)、エネルギー情報局によると、2022年に新設される太陽光発電施設の発電容量は合計で21.5GWが見込まれており、これは2021年の15.5GWを上回り、2022年の新規追加発電容量の46%を占める規模に達している。足元ではちぐはぐな動きも見せるバイデン政権の環境政策だが、新エネルギー開発の動きをさらに前進させ、国内外の議論をリードできるか、引き続き注目される。

(宮野慶太)

(米国)

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