電力不足危機の解決へ計画停電を検討

(スリランカ)

コロンボ発

2022年01月28日

スリランカでは、電力不足を背景に1月末から2月にかけて大規模な計画停電が行われる可能性が濃厚になっている。外貨不足により発電所に必要なディーゼル燃料の輸入が滞っていることと、一部発電機の故障が重なったことが直接的な原因だ。さらに、この時期は降水量が極端に少ない乾季に当たり、貯水池の水位が低下して水力発電量が減少している状況下、ディーゼル発電の不足分を補うために水力発電量を増やして貯水を使用し過ぎたことも、さらなる水位低下を招いている。

スリランカでは従前、ディーゼル発電と水力発電の割合が大きく(1月26日の総発電量中のディーゼル発電割合:36.9%、水力発電割合:33.1%)、主要な発電源が同時に機能不全に陥ったかたちとなった。2019年初頭のやはり乾季にも、極端な降水量減少により水力発電量が低下した結果、計画停電を経験している(2019年4月5日記事参照)。

ガーミニ・ロクゲ電力・再生可能エネルギー相とセイロン電力庁(CEB)は1月24日、計画停電を同日から行う予定と発表した。全国をAからDに地域分けし、それぞれの地域で1時間から2時間程度、事前に組まれた時間割表に沿って計画停電を行い、2月初旬までの予定だ。しかし、その発表直後に政府は緊急会議を開き、通関待ちとなっていたディーゼル燃料の購入費に係る外国為替の工面を決断、3日間程度のディーゼル燃料確保にめどが立ったことから、公益事業委員会(PUCSL)は直近の計画停電は行わないと発表。24日には、翌25日は当初予定していた時間割に沿った停電は行わず、31日以降に持ち越された(一部地域では24、25日に発電機メンテナンスを理由に停電が発生)。

CEBは、現在の状況下では1日当たり150メガワット程度の電力不足が生じるとして、引き続き公益事業委員会(PUCSL)に計画停電の実施スケジュールを提案し、認可を求めている。ディーゼル燃料の安定的な輸入が阻まれている状況で、計画停電が行われる可能性は高まっている。

進出日系製造業をはじめ輸出志向型の製造業らは、製造業協会を通じてCEBと政府に対して、工場の安定的操業のためにも輸出加工区(EPZ、注)には計画停電を適用しないよう働きかけている。同時に、計画停電がEPZで実施された場合、自家発電で電力を賄えるよう準備を進めている。日系製造業にヒアリングしたところ、停電が1日当たり数時間行われる場合、1週間から2週間は自家発電で何とか持ちこたえられるが、かりに1カ月以上長期化すれば、自家発電用の十分なディーゼル燃料の入手も難しい状況で、操業に影響が出てくるだろうとの回答だった。また、自家発電による生産は大きなコスト高となり、利益率が落ち込むことを懸念する声もあった。

(注)輸出加工区=Export Processing Zone、投資促進委員会(BOI)が管理する輸出志向型製造業などが集積する経済特区。テナント企業はBOIの各種支援、インセンティブなどを享受する。

(糸長真知、ラクナー・ワーサラゲ)

(スリランカ)

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