フェロシリコン工場を建設し、単一産業都市の産業多角化を図る

(カザフスタン)

タシケント発

2021年12月23日

カザフスタン北部のパブロダル州エキバストス市で、製鉄の際に脱酸剤として使う合金鉄のフェロシリコンの工場建設が開始された。投資額は920億テンゲ(約239億円、1テンゲ=約0.26円)で、政府系のカザフスタン開発銀行が78%、エキバストス合金鉄が22%を出資する。フェロシリコンの生産能力は年間24万トンで、2023年内に生産開始の予定。製品は100%輸出向けで、輸出額は年間760億テンゲを予想している。工場新設で800の新規雇用が創出される(カザフスタン開発銀行ウェブサイト12月8日)。

エキバストス市は石炭採掘と電力生産で成り立つ単一産業都市(モノゴロド)の1つ。モノゴロドは単一あるいは少数の工場、企業に依存した都市のことで、ソ連時代に計画経済を支えるためにカザフスタンでも各地に建設された。しかし、ソ連崩壊後は産業連関の断絶に加え、都市インフラの老朽化と失業の増加で、若者を中心に都市部へ移住する者が後を絶たない。モノゴロドをより多く抱えるロシアでは、モノゴロドを「優先的社会経済発展区域」(2017年10月4日記事2019年2月20日記事参照)に指定し、優遇税制などを活用して産業多角化を進めようとしている。

カザフスタンには27のモノゴロドがあり(添付資料表参照)、ソ連時代に300万人だった人口が現在では140万人に半減した。それでも、モノゴロドはカザフスタンの工業生産の約40%を占めている。モノゴロドの衰退を放置することは国全体の経済衰退にもつながる。

カシムジョマルト・トカエフ大統領は中央集権から地方自治へ行政制度改革を進めている。2021年9月に行われた一般教書演説では、地方経済の財政基盤となる産業振興と多角化を国家戦略の最優先事項としている。

(増島繁延)

(カザフスタン)

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