外国企業団体が、指紋登録・定期健康診断義務化への懸念を表明

(ロシア)

モスクワ発

2021年12月22日

在ロシア・ドイツ商工会議所(AHK)、在ロシア欧州ビジネス協会(AEB)など在モスクワの外国企業団体・貿易振興機関10団体は12月13日、外国人労働者に対して指紋の登録と定期健康診断受診を義務付ける、連邦法改正の外国企業への影響を最小限とするよう善処を要請する書簡を連名で出した。書簡は、AHKが中心となって作成し、経済政策を担当するアンドレイ・ベロウソフ第1副首相と、保健を含む社会分野を所管するタチアナ・ゴリコワ副首相に宛てたもの。

指紋登録と定期健康診断の義務化は、連邦法第274-FZ号「連邦法『ロシアにおける外国人の法的地位について』および『国家指紋登録について』の改正について」(2021年7月1日付)により、2021年12月29日の発効が決定している。

連邦法によると、2021年12月29日以降、外国人は入国後30日以内に指紋登録と、薬物やエイズウイルス(HIV)などの感染症に関する検査を含む健康診断が必要となる。また、2022年3月1日から外国人は3カ月ごとに健康診断を受ける必要がある。対象には高度熟練専門家(HQS、注)も含まれるため、外国企業からは導入後の混乱を懸念する声があがっている。煩雑な手続きとなることが予測され、運用面でも不明な部分が多いためだ。

例えば、健康診断の受診可能な施設は、今のところモスクワ市郊外の移民局の施設のみだ。新型コロナウイルスへの感染が、滞在拒否の根拠となる指定感染症に含まれるかが不明なこともある。

AHKのマティアス・シェップ会頭は「このような外国企業にとって理解不能で失望感を呼び起こす法令改正は久しぶりだ」と語り、外国企業によるロシアでのビジネス環境に対する評価が低下することへの強い懸念を示した(「ベドモスチ」12月13日)。

AEBは同13日、マクシム・レシェトニコフ経済発展相と非公式会合を持ち、本件について議論した。関係者によると、ロシア経済発展省が外国企業団体との窓口となり、ロシア側関係機関との間の調整が進められる見込みだ(「ベドモスチ」12月13日)。

(注)日本企業を含めて多くの外国企業の駐在員はHQSとして、ビザと労働許可を取得して就労している。本制度を含む外国人就業規制についてはジェトロのウェブサイト参照。

(梅津哲也)

(ロシア)

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