労働組合によるデモ、日系企業の操業にも影響

(インドネシア)

ジャカルタ発

2021年12月14日

インドネシアでは12月初旬から、ジャカルタ首都圏をはじめ、各地で複数の労働組合による大規模デモが発生し、日系企業の操業に一部影響が出ている。

同国では11月末までに2022年の州別最低賃金(UMP)と県・市別最低賃金(UMK)が決定されたが、インドネシア労働組合総連合(KSPI)やインドネシア金属労連(FSPMI)などの労働組合は、これらの上昇率が前年と比較して低く抑えられたことに反発している(2021年12月9日記事参照)。KSPIは政府に対し、雇用創出法2020年11号(雇用創出オムニバス法)の廃止(注)や、既に決定されたUMPやUMKの撤回を求めている(「テンポ」12月3日)。デモは12月6日から10日にかけて全国各地で発生し、日系企業が多く入居する工業団地でもデモが報告されている。

日系企業は労働デモ警戒、対策を実施

ジェトロは12月10日、デモの影響などについて日系企業へヒアリングを行った。西ジャワ州ブカシ県のA社は、デモ隊が自社の組合員をデモへの参加を強要する「スイーピング」の被害を受けた。デモ隊がA社前に集まって敷地内に乗り込もうとしたが、警備員が制止して侵入を食い止めた。ジャカルタ近郊の日系工業団地管理会社B社は、デモ対応として、政府当局や軍隊などと連日の打ち合わせを実施し、警備の人員配置やデモ隊のエスコートルートを決めたほか、入居企業にデモの最新情報をメールで共有する対策を取っている。バンテン州タンゲラン県のC社は、デモ隊への対応として、組合員幹部が正門を交代で防御するほか、スイーピング対策として、工場の出入り口を1カ所のみとし、ほかは施錠しているという。西ジャワ州ボゴール県のD社は、デモへの参加を組合幹部や夜勤明けの組合員などに限って許可し、生産への影響を最小限にとどめている。西ジャワ州ブカシ県のE社は「今回のデモの規模はここ数年でも最も大きい」とし、「自社の組合と連携し、対応していきたい」と話した。

現地の労務事情に詳しいパーソルケリー・コンサルティング・インドネシアの森智和氏は、デモは少なくとも2022年1月まで、長期化すれば2月ごろまで続く可能性があると指摘する。また、企業が行える対策として、生産活動が可能なうちに在庫確保を行うことや、必要な場合は警察官の配置、監視カメラの設置などを挙げた。

(注)2020年制定の雇用創出オムニバス法により、これまで県・市の業種ごとの最低賃金を定めていた「産業別最低賃金」(UMSK)は撤廃された(2020年12月10日記事参照)。憲法裁判所は11月25日、同法の立法手続きに瑕疵(かし)があるとして、違憲判決を出している(「ジャカルタ・ポスト」紙11月26日)。

(上野渉)

(インドネシア)

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