主要都市・県の2021年の最低賃金が出そろう

(インドネシア)

ジャカルタ発

2020年12月10日

インドネシアの主要都市・県の2021年の最低賃金が11月末までに出そろった。労働省は10月、国内経済の状況に配慮して、翌2021年の最低賃金を2020年と同等に調整するよう地方首長に回状を出していた(2020年10月28日記事参照)ため、州レベルでは賃金を上げない判断をした首長もあるが、県・市レベルでは、ほとんどの地域で2020年を超える最低賃金額が設定された。

現地報道などから主要都市・地域の状況を取りまとめた結果、2021年の最低賃金が最も高い地域は西ジャワ州カラワン県で、月額479万8,312ルピア(約3万5,987円、1ルピア=約0.0075円)となる(添付資料表参照)。最も安いのはジョグジャカルタ市で、206万9,530ルピア。主要都市・県の中で最も上昇率が高いのは西ジャワ州ブカシ県(6.51%)で、月額479万1,844ルピアとなり、カラワン県の月額最低賃金に肉薄している。両県には多くの日系企業が集積しており、国内最高水準の最低賃金額とその急速な上昇が経営課題となっている。

雇用創出オムニバス法の成立で、新たな産業別最低賃金(UMSK)に影響も

インドネシアでは従来、市・県別最低賃金(UMK)が発表された後、県・市によってはさらに産業別最低賃金(UMSK)が決められていた。UMSKは二輪、四輪、電子電機、縫製など当該地域の主要な産業セクターに設定される。このUMSKはUMKよりも高く設定される上、決定の時期や方法が不明瞭なため、UMKにも増して、日系企業の経営課題となってきた。

しかし、10月5日に可決され、細則整備が進められている雇用創出オムニバス法(2020年10月13日記事参照)が2021年のUMSKに影響を与えそうだ。労働省賃金局長のディナル・ティトゥス・ジョガスウィタニ氏は西ジャワ州労働・移民局に対する返答書簡の中で「雇用創出オムニバス法に規定されていないため、もはやUMSKは存在しない」と回答し、「現状のUMSKが州別最低賃金(UMP)やUMKより高い場合は有効だ。だが、各州知事が新たにUMSKを設定することはない」と述べた。これに対し、インドネシア労働組合総連合(KSPI)のサイド・イクバル氏は「法を理解していない労働省の賃金局長の返答書簡を強く非難し、知事に直ちにUMSKを決定するよう要請する」と反発している(CNBCインドネシア12月1日)。

(尾崎航)

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