新型コロナ・オミクロン株で観光業に打撃、政府が旅行関係者の緊急会合開催

(南アフリカ共和国)

ヨハネスブルク発

2021年12月03日

新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン」が報告されてから、各国が南アフリカ共和国を含む南部アフリカからの渡航者に対する入国規則を厳しくしたほか、国際線の多くが南アへの就航を停止した。回復しつつあった観光産業が再び打撃を受ける中、南アのリンディウェ・シズールー観光相は11月28日、旅行業関係者を集めた緊急会議を開催し、今後の課題について議論を交わした。

11月27、28日の週末に外国からの多くの観光客が見込まれていたが、南アでのオミクロン株確認によって、旅行を見送らざるを得ない状況となった。観光産業は南アのGDPの3%を占めており、2020年12月の感染第2波とそれに伴うロックダウン(2020年12月16日記事参照)からの回復に大きな期待がかかっていたが、南アの旅行関連団体などは、週末に発生した南ア観光産業の損失規模を10億ランド(約71億円、1ランド=約7.1円)と推定している。また、南ア・ホスピタリティー協会(FEDHASA外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)のローズマリー・アンダーソン議長は、このまま厳しい渡航制限が取られた場合、2021年12月~2022年3月の期間に予想されていた経済効果の78%を失い、観光産業に260億ランドの損失があるだろうという見方を示した。

なお、現地報道によると、今後3カ月間の欧州各都市から南アへの国際線の座席数約33万5,000席のうち4割が英国からの渡航者となっている。英国は10月11日、南アをレッドリストから除外していた(2021年10月11日記事参照)。12月2日時点で一部フライトは就航しているものの、航空会社によっては、搭乗可能者は自国民に限るなどの措置を取っている。

こうした事態を受け、リンディウェ・シズールー観光相は11月28日、旅行業関係者を集めた緊急会議を実施し、各国の規制強化による南ア観光産業への影響と検討した上で、観光業への影響を最小限に食い止めるために官民がどう協力すべきかなど今後の方向性を議論した。また、これからの休暇シーズンに向け、当面の優先事項は国内旅行を維持し、150万人に上る観光業関係者の雇用を守ることとした。この会議は今後も定期的に開催される予定だ。

(堀内千浪)

(南アフリカ共和国)

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