米商務省、カンボジア向け輸出管理を強化、腐敗や人権侵害を理由に

(米国、カンボジア、中国)

ニューヨーク発

2021年12月09日

米国商務省は12月7日、カンボジア向けの輸出管理を強化すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。正式には同省産業安全保障局(BIS)が9日付の官報で、輸出管理規則(EAR)の改正に関する最終規則を公示外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますする。また、国務省も9日付の官報で、カンボジア向けの武器輸出の禁止措置を強化すべく国際武器取引規則(ITAR)を改正する最終規則を公示外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますする。

商務省によると、EAR改正の要点は次のとおりで、国務省のITAR改正と整合性を持たせたとしている。

  • カンボジアをEAR上のカントリーグループ(注1)のD:5(武器輸出禁止対象国)に追加するとともに、規制品目リスト(CCL)で「安全保障(NS)」を理由として規制している品目をカンボジアに輸出・再輸出・国内移送(以下、輸出など)する場合の許可審査方針を厳格化する。
  • カンボジアをEAR第744条21項で規定した「軍事用途・最終需要者」に関する規制、同条22項で規定した「軍事諜報用途・最終需要者」に関する規制(注2)の対象国に追加する。

米政府が今回、カンボジア向けの輸出管理を強化した理由について、商務省は同国政府の腐敗や人権侵害、同国における中国軍の影響力拡大を挙げている。国務省のウェンディ・シャーマン次官は2021年6月のカンボジア訪問時に、同国のリアム海軍基地での中国軍の存在と建設行為に懸念を表明していた。ジーナ・レモンド商務長官は今回の規制強化に関する声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの中で「われわれはカンボジア政府に対し、腐敗と人権侵害に関して意味のある改善を行うとともに、地域と世界の安全保障に脅威となる、同国における中国軍の影響力の軽減に取り組むよう促す」と述べている。

国務省と財務省、商務省は11月10日には、カンボジアの腐敗や国際組織犯罪、人権侵害が改善されないことを受けて、米産業界向けにそれらリスクある行為に関わらないようデューディリジェンスを行うよう勧告を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますしていた。同時に、現在は失効中の開発途上国向けの特恵関税プログラム「一般特恵関税制度(GSP)」が米議会で更新された場合、カンボジアがその対象国として適当か、通商代表部(USTR)が評価するとしている。

(注1)BISが諸外国・地域を輸出管理上の懸念度で分類した表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。カンボジアは現在D:1(安全保障上の懸念国)のみに指定されている。

(注2)EAR第744条21~22項は当初、中国、ロシア、ベネズエラ向けに新設した規制内容。軍事転用リスクが高いとしてBISが指定した品目が、対象国における軍事・諜報(ちょうほう)目的に使用、または軍・諜報関係者に渡ることを承知しながら輸出などする場合に、BISへの事前の許可申請を求めるルール。2021年3月には、国軍が権力を掌握したミャンマーもこの規制の対象国に追加した(2021年3月9日記事参照)。

(磯部真一)

(米国、カンボジア、中国)

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