11月の米消費者物価、前年同月比6.8%上昇、39年ぶりの高い伸び

(米国)

ニューヨーク発

2021年12月13日

米国労働省が12月10日に発表した2021年11月の消費者物価指数(CPI)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)は前年同月比6.8%上昇、変動の大きいエネルギーと食料品を除いたコア指数は同4.9%上昇となった(添付資料図参照)。民間予想はそれぞれ6.7%、4.9%だった。各指標の前年同月比の伸びは、CPIは1982年6月以来、コア指数は1991年6月以来最大だった。一方、前月比でみると、消費者物価指数、コア指数はそれぞれ0.8%、0.5%上昇と、前月の伸び(それぞれ0.9%、0.6%上昇)からやや低下した。

品目別に前年同月比で見ると、食料品は家庭用、外食ともに伸びが高く、全体でも6.1%と、2008年以来最高の水準だった。さらに、ガソリンが58.1%上昇で、2021年5月以来となる50%超の伸びを記録した。財では、中古車が31.4%上昇、新車11.1%上昇と、どちらも伸びが加速しており、エネルギーと食品を除いた財でも、前年同月比9.4%上昇と、前月より1.0ポイント伸び率が高い。他方、エネルギー関連サービスを除いたサービスは3.4%上昇と、前月から0.2ポイントの増加にとどまるが、物価全体で3割程度のウエートを占めている住居費が3.8%と、最近になって上昇が顕著となっている。航空運賃は3.7%低下で前月に引き続きマイナスだが、前月比では4.7%上昇で5カ月ぶりのプラスとなった(添付資料表参照)。

バイデン政権は11月23日、石油戦略備蓄の市場放出を決定したが(2021年11月24日記事参照)、今回のCPI公表後にジョー・バイデン大統領は声明を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますし、このCPI統計には最新の物価動向が反映されていないが、物価上昇のペースが徐々に鈍化していると述べ、一部の州でガソリン価格が低下していることを指摘した。加えて、議会で審議中のビルド・バック・ベター(BBB)法案について、医療費などによる家計への負担を軽減させるとして、早期の成立を訴えた。議会では債務上限問題(2021年12月6日記事参照)に関し、与野党で勢力が拮抗(きっこう)する上院で本来、法案可決に60票が必要なところ、債務上限問題に限って単純過半数での議決を可能とする法案が上下院で成立している。12月13日の週にも債務上限引き上げそのものに関する議決が行われる見込みとされており、この処理が終われば、BBB法案の議決に移っていくとみられている。また、原油価格高騰に関連し、連邦政府が米国外への石油輸出を禁止する措置を検討しているという指摘に対し、議会からはそれに反対する書簡がホワイトハウスに送られるといった動きがあるが、ブライアン・ディーズ国家経済会議委員長は「現在、われわれが注目している問題ではない」とし、同措置について否定している(ロイター12月9日)。

12月14、15日には連邦公開市場委員会(FOMC)が開かれるが、ジェローム・パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長は量的緩和策縮小(テーパリング)のペース加速を議論する意向を示している(2021年12月6日記事参照)。高インフレの現状を踏まえ、テーパリング終了や利上げの時期、2022年の利上げの回数などについて、パウエル議長からどのようなメッセージが発信されるのかが注目される。

(宮野慶太)

(米国)

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