米11月の非農業部門雇用者数は21万人増の低水準、失業率は4.2%に低下

(米国)

ニューヨーク発

2021年12月06日

米国労働省が12月3日に発表した11月の非農業部門の雇用者数は前月から21万人増で、市場予想(57万3,000人増)を大きく下回った。一方、失業率は、失業者数が前月から54万2,000人減少したことに加え、就業者数が113万6,000人増加したことにより、4.2%〔添付資料「図 失業率の推移」、「表1 米国の雇用統計(11月速報)」参照〕と、前月(4.6%)より改善した(市場予想は4.5%)。なお、10月の非農業部門の雇用者数は53万1,000人増から54万6,000人へと上方改定された(2021月11月9日記事参照)。

失業者のうち、一時解雇を理由とする失業者数は前月(105万6,000人)より25万5,000人減少して80万1,000人、恒常的な失業者数も前月(212万6,000人)より20万5,000人減少して192万1,000人となった。

労働参加率(注)は前月から0.2ポイント上昇して61.8%だった。失業給付金打ち切りなどにより職探しを再開する人の増加が期待される中、11月の労働力人口は前月から59万4,000人増加の増加となった。

平均時給は31.03ドル(10月:30.95ドル)と、前月比0.3%増(10月:0.4%増)、前年同月比4.8%増(10月:4.8%増)と引き続き高水準で推移している(添付資料表1参照)。

11月の非農業部門雇用者数の前月差は、21万人増と前月の増加幅(54万6,000人増)から縮小した。前月からの雇用増減の内訳をみると、民間部門は23万5,000人増で、そのうち財部門が6万人増で、製造業、建設業ともに3万1,000人増となった。サービス部門は17万5,000人増で、運輸倉庫業5万人増、娯楽接客業2万3,000人増、対事業所サービス9万人増、教育・医療サービス4,000人増など全般的に低調だった。また、小売業は2万人減と7月以来の減少となり、政府部門は2万5,000人減と4カ月連続で減少した(添付資料表2参照)。

人種別の雇用状況については、11月のそれぞれの失業率は、白人3.7%(前月:4.0%)、アジア系3.8%(4.2%)、ヒスパニック・ラテン系5.2%(5.9%)、黒人6.7%(7.9%)と全ての人種で前月から改善している。

11月の雇用者数の増加は低水準だったものの、労働参加率が上昇する中で失業率が大幅に低下しており、人手不足が加速していることがうかがわれた。ただ、新型コロナウイルスのオミクロン株の出現により、今後の労働市場の回復を始めとする経済の先行きに不透明感が漂ってきている。連邦準備制度理事会(FRB)による量的緩和策の縮小(テーパリング)は既に開始されているが(2021年11月5日記事参照)、このような先行き不透明な状況でも、ジェローム・パウエルFRB議長は、インフレは加速しており物価高騰が2022年半ばまで続く見通しを示した上で、「次回の連邦公開市場委員会(FOMC)でテーパリングのペースの加速を議論するつもりだ」と議会証言で述べ(ロイター11月30日)、足元の物価高騰を踏まえた対応を急ぐ考えを示した。

次回のFOMCは12月14、15日に開かれる。パウエル議長の任期は2022年2月までだが、ジョー・バイデン大統領は2021年11月22日、同氏の再任を発表し、「新型コロナ禍」が続く中、金融政策を任せる判断を下している。オミクロン株の影響が不透明で、物価など過熱気味になっている経済金融情勢に対し、パウエル議長はじめFRBが今後どのように対応するかが注目される。

(注)労働参加率は、生産年齢人口(16歳以上の人口)に占める労働力人口(就業者+失業者)の割合。

(宮野慶太)

(米国)

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